芭蕉の泊まった一関の宿◆菅原宏通
2009年 10月 09日
県南史談会(遠藤輝夫会長)の研究発表会は26日、会員や市民50人が参加して一関市田村町の市総合防災センターで開かれ、会員2人が日ごろの研究成果を披露した。
同市花泉町出身で、東京都在住の菅原宏通さん(64)が「新しい考察『一関の芭蕉の宿』について」、市博物館の大島晃一副館長が「江戸時代の時鼓について―時の太鼓の全国調査とその結果」と題してそれぞれ講演。
このうち、菅原さんは江戸時代の俳人松尾芭蕉が1689(元禄2)年5月12日に一関を訪れたとされる際の旅宿について持論を展開。旅の実録『曽良旅日記』に路銀を消費した記号がある、として旅籠(はたご)に泊まった説を有力視した。
同地地主町を舞台に諸説ある中、郷土史家の間で有力視されていた検断『白土屋』の付近に『今出屋』があることを指摘。今出屋の子孫が残した生活記録「随想自伝」により、元禄から続く宿場茶屋だったらしく、位置関係も確認できるとした。
その上で「『今出屋』は俳諧に無関係であり、『曽良旅日記』に何も記載がないのは理解できる」と推測。「一関の宿では句会も開かれず地元文人との交流も記されていないことから、宿は『今出屋』という一般的な旅館だった」 と主張した。 ―『岩手日日新聞』(平21・7・30)から転載―