縁あって、八月五日(水)から群馬県高崎市に三泊した。集中講義のためである。早起きすれば通勤できない距離ではなかったが、講義に集中するためと、めったにない機会を友人との四方山話に費すためである。ふたりで三晩、席を替えて夕食と雑談を愉しむ。旅先は呼吸をするだけでも新鮮な気持ちになるが、とりわけ二日目の「むそう庵」という蕎麦屋さんが忘れられない。高崎から高崎線で二つ目の新町駅を出てまっすぐ、国道十七号線を横断してまもなくのところに、まるで子どものころに親に手を引かれて通った、ジジババの家のごときなつかしい和風のたたずまいで、すっかり長居してしまった。そば殻が少なく、東京ふうで透明度の高いお蕎麦であった。
噴水も研究棟も夏休み 海 紅