アヤコさんから便りがあった。〈お墓掃除と廃屋の整理に帰省して〉いた由。子規の足跡を追って木曽路を歩くなど、健脚をほしいままの様子である。〈先生の「木苺」の句を拝見していると、子規が奈良井宿で茱萸を求めて喜び、上松、須原の道々、「覆盆子桑の実に腹を肥やしたれば昼餉もせず」と歩く箇所がかさなり、木苺などの赤い木の実は誰の心にもある望郷、戻ることのできない、でも戻りたい郷愁の色であることに気づかせてくれます〉とある。過分なほめことばだが、これは彼女が詩人のせいである。詩人は駄句をもよく味わう感性を持ち合わせている。
戻りたし木苺摘みし山の子に 海 紅