欲がない文章◆川崎展宏・大岡信
2009年 11月 14日
(略)
川崎 それはもうびっくりしました。先日読みまして、びっくりして今日持ってこようと思っていたのですけど。それから晴子さんの『遥かなる父・虚子』も聞き書きがすごい。お世辞でも何でもないです。またお兄さんの『父 高浜虚子』の文章、あれも八十代の方の文章とは思えないですよ。みずみずしくて。それから章子さんの「春潮」の「佐介此頃」。みんな文章がいい。いいとはどういうことかよく言えないけれど、いってみれば、言葉の配列と間(ま)ですね。どうしてあんなにうまいのか。
(略)
川崎 今挙げた四つの文章に共通するところは、欲がないということですよ。
大岡 そうですね。
川崎 欲がないから。欲がある文章は下がって見えてしまう。
―「父・虚子、俳人・虚子を語る」 、『国文学』(學燈社 平成3.10)所収―