闇を見よとや4◆生きる力※
2010年 02月 18日
…… 死んだ人には何事も手遅れである。
まことにその通りであるが、これは、ひごろ浄土思想を説いている遁世の人が、法事の席で言うところに深遠なる意味があろう。よく生きよというのである。
仮に天があるとして、天命は人の力の及ばざるところともいう。人が行なうべきかぎりを尽くすのが人の道(humanity)と言ったのは宣長であったろうか。落葉をかいて堆肥をつくるように、みな寄せ集めてかみしめるべきことば。芭蕉も、「諸善諸悪皆生涯の事のみ、何事も何事も御楽可被成候」(元禄三年七月十七日牧童宛)という。欲するままにという意味ではない、たぶん。念のため。
〔牧童〕 立花氏。研屋彦三郎。加賀(金沢)の人。『おくのほそ道』の旅で芭蕉が世話になった北枝の兄で、加賀藩の御用(研師)を勤めた。芭蕉に師事する前は宗因に俳諧を学んだと伝える。