人気ブログランキング | 話題のタグを見る

満願◆『おくのほそ道』を偲ぶ旅ひとつ ※

 元禄二年(一六八九)、みちのくの旅をした芭蕉には旅のあちこちで巻いた連句がある。山形の尾花沢・大石田では「すゞしさを」歌仙、「おきふしの」歌仙、「さみだれを」歌仙の三巻が著名。はじめて見る山河や地元の人々の話に耳を傾けて巻かれた作品に、それらはきっと投影されているはずだ。

 早春の最上川を見に出かけた。この時季は芭蕉の知らない時空だが、それだけに新鮮なものもあるだろう。新幹線つばさで大石田、大石田から銀山温泉へ、銀山温泉を出て冬囲いの養泉寺、「尾花沢市芭蕉・清風歴史資料館」見学、さらに大石田に出て、雪解の最上川や足裏に畳の冷たい乗船寺をめぐる。この寺では国訛りやさしい女から寺の縁起を聞き、残雪の細い径をこじあけて寝釈迦を拝した。芭蕉句碑や茂吉の墓、子規の句碑も雪の中であったが、これもしみじみとよい景色である。帰りの新幹線を待つ間に、「トトロ」という茶店で一句会を終えると、同行の千寿子さんに嫁と孫ふたりを伴う老婦人が話しかけてきた。聞けば鈴木清風の末裔という。旅の不可思議な魅力はこんなところにあるものだ。芭蕉会議で都合のつくメンバー十六名の旅であった。

  春雨の同じ車輌の十余人     海紅
  雨女ゐてみちのくの春雨に    同
  雪残る中の小さな丸が好き    同
  交叉する土が畔道雪残る     同
  真ん中に湖を置き雪解町     同
  トタン屋根赤青みどり雪解町   同
  雪解川二つの滝に分かれけり  同
  女将出て大女将出て春の月   同
  雪片を仰ぐ目すぼめ母を恋ふ  同
  雪片の引き連れてくる父恋し   同
  雪明かり頼りに寝釈迦覗きけり  同
    鈴木清風の末裔に逢ふ
  嫗とはかく美しき春の雪      同 
  


  反古にした約束のあり二月尽く  敬子
    出湯の町の早き摘草      海紅
by bashomeeting | 2010-03-06 21:40 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


by bashomeeting