満願◆『おくのほそ道』を偲ぶ旅ひとつ ※
2010年 03月 06日
早春の最上川を見に出かけた。この時季は芭蕉の知らない時空だが、それだけに新鮮なものもあるだろう。新幹線つばさで大石田、大石田から銀山温泉へ、銀山温泉を出て冬囲いの養泉寺、「尾花沢市芭蕉・清風歴史資料館」見学、さらに大石田に出て、雪解の最上川や足裏に畳の冷たい乗船寺をめぐる。この寺では国訛りやさしい女から寺の縁起を聞き、残雪の細い径をこじあけて寝釈迦を拝した。芭蕉句碑や茂吉の墓、子規の句碑も雪の中であったが、これもしみじみとよい景色である。帰りの新幹線を待つ間に、「トトロ」という茶店で一句会を終えると、同行の千寿子さんに嫁と孫ふたりを伴う老婦人が話しかけてきた。聞けば鈴木清風の末裔という。旅の不可思議な魅力はこんなところにあるものだ。芭蕉会議で都合のつくメンバー十六名の旅であった。
春雨の同じ車輌の十余人 海紅
雨女ゐてみちのくの春雨に 同
雪残る中の小さな丸が好き 同
交叉する土が畔道雪残る 同
真ん中に湖を置き雪解町 同
トタン屋根赤青みどり雪解町 同
雪解川二つの滝に分かれけり 同
女将出て大女将出て春の月 同
雪片を仰ぐ目すぼめ母を恋ふ 同
雪片の引き連れてくる父恋し 同
雪明かり頼りに寝釈迦覗きけり 同
鈴木清風の末裔に逢ふ
嫗とはかく美しき春の雪 同
反古にした約束のあり二月尽く 敬子
出湯の町の早き摘草 海紅