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新しい季題◆風鈴

 通勤の車中で、今日の「蕪村とともに暮らす」という講義の題を風鈴と決めた。ところが、研究室に着いて蕪村全集を見ると、風鈴の句は一句しかない。芭蕉全集にはひとつもない。さて困った。
 蕪村の一句は次の通りだが、感動の焦点が風鈴を逸れて、決してできのよい句ではない。ますます困った。

  風鈴や花にはつらき風ながら  遺草・年次未詳

 風鈴は室町期に中国から日本に入った。とすれば、近世に佳句が少なくても致し方あるまい。そう考えて、主に近代俳句の中からその味わいを探った。実体としての涼しさではなく、涼味・涼感の世界をわかってもらおうとした。

  風鈴の空は荒星ばかりかな    芝 不器男
  風鈴の短冊反りしおろしたて    柴原 碧水
  風鈴をしまふは淋し仕舞はぬも  片山由美子

 話しているうちに、子どものころに町をまわってきた金魚売りや子供たちを呼び集めていた紙芝居、家々を訪ねては仕事をもらっていた傘の直しや包丁研ぎのことを思い出した。また、滑り台の列に並んだり、昼寝覚めの空気が苦手で、中退してしまった幼稚園のころを思い出した。

  風鈴や眼ひらきて魚並ぶ         海 紅
by bashomeeting | 2010-06-24 12:52 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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