初燕が我が家にやってくるのが三月の末で、古巣を修復するのが四月、卵を産んで抱いて子育てをして六月が過ぎ、九月にはあたたかな南へと帰って行く。しかし、今年は巣作りのはじめを鴉に脅かされたせいか、それ以後見かけることはなかった。ところが、一昨日の朝には巣立ったばかりと思われるしなやかな燕がやってきて、玄関先で遊んで帰って行った。こんな年は初めてである。我が家での巣作りをあきらめて、もっと環境のよい場所で無事子育てを終えた親とその子が遠出して、ふらりと遊びに来てくれたのであろうか。
子燕に叱られて拭く涙かな 海 紅