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この人の一首◆杉本照世『吾亦紅』

歩道橋の向かうに見ゆる中学校二年の日々を我は務めき
受取拒否すれども消ゆることのなき住基ネットのわが背番号
卒業の朝に小雪の舞ひしこと幾年後に君等語るや
独り住む淋しさなどは言ひもせず友に手をふり別れ来にけり
さらさらと白き骨なりし心厚く八十五年を生きたる人の

 ……中でも、平成十五年の六月に母を、八月に父をと相次いで見送り一人居となってからの七年は、百年に一度という世界的な大恐慌にのみ込まれた社会の有り様に戸惑い、IT革命とやらの情報システムについてゆかれずに、ただおろおろとする過ぎ行きの日々でした。ふりかえって、何とも暮しがたい日々を支えてくれたのが、短歌を詠むことであり、短歌を通しての人と人との交流でした。(略)
 この歌集の上梓を私に思いたたせたもう一つの願いは、老いてゆく両親の傍に在って、自分たちのめんどうをみながら生活を共にしている独り身の娘を後に残してゆくことを、逝くその日まで案じていてくれた両親の思いに応えることでした。
 この歌集を両親に捧げます。     ―『吾亦紅』あとがきより―



〔『吾亦紅』〕  杉本照世歌集。平成22年6月刊、渓声出版。
Commented by tuyukusa at 2010-07-04 07:50
何とも暮らしがたい日々を支えてくれたのが、短歌を詠むことであり短歌を通しての人との交流・・とても心に響きました。こんな風に自分もありたいと思いました。ありがとうございました。
Commented by 山房の海紅 at 2010-07-04 23:03
まことに同感であります。私どもの俳句とその仲間とのえにしもそのようなものと思われます。
by bashomeeting | 2010-07-03 17:08 | Comments(2)

芭蕉会議の谷地海紅(快一)のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


by bashomeeting