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季刊『船団』86号◆アンソロジーというかたち

 坪内稔典さんから、季刊『船団』86号をいただいた。まず稔典さんの「俳句五百年⑫ 初恋を偲ぶ夜」を読む。所属大学の通信学部のスクーリングで高橋順子編『日本の現代詩101』(新書館)を読んだ話。そこで井伏鱒二の「逸題」という詩に出会った喜びの話。詩は次の通り。

      逸題

   今宵は仲秋明月
   初恋を偲ぶ夜
   われら万障くりあはせ
   よしの屋で独り酒をのむ

   春さん蛸のぶつ切りをくれえ
   それを塩でくれえ
   酒はあついのがよい
   それから枝豆を一皿

   ああ 蛸のぶつ切りは臍みたいだ
   われら先づ腰かけに坐りなほし
   静かに酒をつぐ
   枝豆から湯気が立つ

   今宵は仲秋明月
   初恋を偲ぶ夜
   われら万障くりあはせ
   よしの屋で独り酒をのむ

 この詩の「よしの屋で独り酒をのむ」の「独り」をいたく気に入った話。このフレーズに至ったとき、「もう授業などやめて飲みに行きませんか、万障繰り合わせて」と言いたくなったという話。今年の仲秋の名月には〈われらよしの屋〉に万障繰り合わせて集まりたいという話。 
 こんなことを富澤赤黄男の限定五部の手書き句集『陽炎草紙』(昭19・7)の紹介に重ねていく趣向の一文である。

   曼珠沙華けふも流るる山河かな  (赤黄男・陽炎草紙)

 中に、「俳句という小さな詩は、個人の句集よりもむしろアンソロジーというかたちの方がふさわしい気がする」とある。同感である。
Commented by 田中順子 at 2010-10-02 18:02 x
『銀河に架ける橋』拝見しました。芭蕉が、情の深い新潟の地での『おくのほそ道』をどのように演出しようかと考えこんなロマンチックな俳句ができたのですね。ところで、私も坪内稔典氏の「正岡子規ー病気を楽しむ」を拝聴して子規の生き様に感動しました。ただ「表現が先にあって、しかるに感動がそなわるという句法」の話を聴いて「えーそなの?」と勉強不足の私はがっかりしました。このブログで、谷地先生が「題詠もまた感動なしに表現されるものではない」とおしゃっていることを見つけて安心できました。このブログの内容は私には難しくてわからないことが多いのですが、芭蕉をほんの少し勉強したので、今回のアンソロジーにうなずけてうれしくなりました。今後も楽しみに拝見させていただきます。
Commented by 山房の海紅 at 2010-10-02 23:45 x
稔典さんの講演会場に来ていたのですね。その後の懇談会に出てくれれRば、面白かったのに…。ブログを見ていただきありがとうございます。
Commented by 田中 at 2010-10-04 19:13 x
懇談会がとても楽しかったと参加された方に聞きました。スクーリングに出かけるたびに東京近郊の方がうらやましくなります。でも、私の住んでいる近くでは、おいしい梨、葡萄、苺、柿、蜜柑がお手頃で手に入ります。
by bashomeeting | 2010-10-02 10:00 | Comments(3)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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