人気ブログランキング | 話題のタグを見る

この人の一句◆吉田千嘉子『朳囃子』

  口中に苺酸つぱく別れけり
  受験子のひと呼吸して発ちにけり
  丁寧な一字一字や受験絵馬
  女雛の手扇を持ちて落ち着きぬ
  辛夷咲き森の呟き始まりぬ
  かくれんぼ鬼を忘れて土筆摘む
  銀漢に届けと積めるケルンかな
  地回りの猫を逃さずゐのこづち
  マフラーに頬を埋むる渇きかな
  異次元へつづく扉や大枯野
  白鳥の影もろともに着水す
  鮟鱇の箱のかたちに身を委ね
  海といふ大きな器風花す
  春寒や秤はみだす蛸の足
  猫柳束ごと挿され無縁塚
  螢の夜誰とは知らぬ肩に触れ
  母の前嘴ばかり燕の子
  葉桜の淋しさといふ身の軽さ
  銀河鉄道通りしあとのちちろかな
  尾で話す牛の寄合秋高し
  蕗の葉の脱ぎ捨てられしごとく地に
  尺取の生きるといふは測ること
  蓑虫や山の噂は風に聞き
  野の芹の丈三寸を摘みにけり
  水中花つくづく水に飽きにけり
  久闊の障子からりと開きにけり
  
〔解題〕吉田千嘉子句集『朳囃子』。書名はエブリバヤシと読む。〈毎年二月十七日から四日間、青森県八戸市を中心にして行われる豊年予祝の伝統行事〉(あとがき)に「えんぶり」があり、書名はそれに依っている。作者は俳誌『たかんな』副編集長で俳人協会会員、また木目込人形作家でもある。「たかんな」主宰藤木倶子序。片山由美子が「冷静に、大胆に」と題する栞文を寄せる。角川SSC、平成22年9月刊。
by bashomeeting | 2010-10-23 05:24 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


by bashomeeting