大江ひさこ 個人詩誌『黒マント』終刊号
2010年 11月 29日
マスクで顔をかくし軍手をはめて外へでる
子ガラスの後ろへ忍び寄り
一度で掴まなくては
むんずと掴む
む
この子は生きられると思う
―「カラスのみどり」の一節(『黒マント』終刊号所収)―
大江ひさこさんの個人詩誌『黒マント』が13号を以て終刊になる。先日、その刊記「2011年1月1日」を迎える前に恵与される幸運を得た。この詩はその巻頭作品の抄出。2004年から俳句の座で親しくしてもらった御褒美のようなものであろう。
大江さんの詩は文字通り詩だが、文章もまた詩である。詩は鼓動であり、脈搏であるという意味で、彼女の文章は詩そのものと言ってよい。
しかし、いうまでもなく俳句は十七音の拍動しかないので、大江さんの鼓動を伝えきれないこともある。しかし、彼女にはそのもどかしさを愉しんでいるふしがある。つまり、アグレッシブなのである。どこまでもアグレッシブな人の詩誌の終刊号だから、言いかえれば、終わりは始まりのような人だから、次になにか来るか愉しみに待っていればよいのであろう。