新方丈記7◆『写真で歩く奥の細道』―ブログ「ねんてんの今日の一句」より転載
2011年 03月 31日
古畑や薺摘み行く男ども 松尾芭蕉
芭蕉にだってほとんど話題になることのない句がある。今日の句もそのひとつ。この句では「男ども」の正体が分からない。七草の薺を男たちが用意した、というのだろうか。それはともかく、この句を作った同じ年に芭蕉は「古池や蛙飛び込む水の音」と詠んだ。この時期、芭蕉は「古畑」「古池」という「古」のつく言い方にこだわったのだろうか。
谷地快一から『写真で歩く奥の細道』(三省堂)を貰った。俳文学者、久富哲雄の写した写真を通して芭蕉の「おくのほそ道」を鑑賞しようという試みの本。編集、語釈などは谷地による。彼の解説によると、「おくのほそ道」の文章量は陸奥、出羽が半分以上を占めるという。こんどの震災の地に心を寄せていたのだ、元禄の芭蕉は。
〔附記〕「ねんてん」とは坪内稔典(つぼうち としのり)氏の俳号の読みかた。氏は俳人で京都教育大学名誉教授。現在佛教大学教授。子規や漱石研究で知られ、俳句と批評誌「船団の会」代表。