明智が妻の話◆―「紙衾の記」に貧という言葉が出たついでに―
2011年 06月 06日
将軍明智が貧のむかし、連歌会いとなみかねて、侘びはべれば、その妻ひそかに髪を切りて、会の料に供ふ。明智いみじくあはれがりて、いで君、五十日のうちに輿にものせんと言ひて、やがて言ひけむやうになりぬとぞ。
月さびよ明智が妻の話せむ ばせを
又玄子妻に参らす。
〔解題〕
「明智が妻の話」は、『おくのほそ道』の大垣の章にある通り、奥の細道の旅に続いて伊勢参宮した芭蕉が斗宿した又玄(師職、門人)の妻を、流浪困窮の時代の明智光秀を支えた妻を引き合いにして讃える句文。