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白鳥春彦編訳『超訳 ニーチェの言葉』ディスカヴァートゥエンティワン 平12.1刊

 白鳥春彦編訳『超訳 ニーチェの言葉』はまだ売れ続けているだろうか。刊行直後の提灯記事を読んで飛びつきそうになったが、そういう貪欲な自分がイヤで、まだ読んでいない。飛びつきそうになった理由は、とっさに、ニーチェの基本概念であるニヒリズムと芭蕉の人生哲学が似ている気がしたからだ。つまり、芭蕉はそれまで当然のごとく思われてきた和歌伝統や中世の無常観にとっぷりと浸かったのちに、それらの価値体系を毀した人であったように思うのだ。毀したのちの芭蕉にシニシズム(冷笑主義)やヘドニズム(刹那的快楽主義)という悲観はなく、むしろ現世を肯定する諦観があるのだが、伝統という高い価値を崩壊させた点でニヒリズムの人ではなかったか。
 なお告白すれば、むかし難解ゆえに放置した『権力への意思』『ツァラトゥストラはかく語りき』や『この人を見よ』に対する劣等意識を克服しなければいけないと思い直したのかもしれない。だって、刊行後すぐに、〈きわめてわかりやすい〉と評判になっらから。しかし、これはすでに〈ニーチェ〉ではないと暴露しているようで、「超訳」の語にはどこかなじめない。
by bashomeeting | 2011-11-07 02:29 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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