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あやうい人間

……人間は危うい生きものだね。
とMは言った。四年ぶりの再会のあいさつは、ほかならぬ原子力発電とその事故のこと。
……私も〈跡始末のできないことをしてはならぬ〉と書いたことがある。
ボクが答えた。
……「ちちをかえせ/ははをかえせ/としよりをかえせ/こどもをかえせ」という詩を生んだ国だぜ。
とMがボクを悲しい目でみつめる。
……「わたしをかえせ/わたしにつながる/にんげんをかえせ/にんげんの/にんげんのよのあるかぎり/くずれぬへいわを/へいわをかえせ」か。
とボクが続けた。峠三吉『原爆詩集』の序である。

 原子爆弾で終止符を打たされた国であるにもかかわらず、戦後の豊かさと引き替えに、跡始末の方法を持たぬまま原子力発電を受け入れてきた。その浅い思考と手続きの未熟さが、東日本大震災に伴う事故をまねいた。つまりボクらは、三吉の言う「わたし」「にんげん」「へいわ」を描ききれていなかったわけだ。
 死の灰は見えない。見えないことを不幸と思うし、ときに幸いとも思う。名状しがたい人の世のあわれ。スイッチを持つ者をきちんと育てねばならぬ。
by bashomeeting | 2012-01-02 04:56 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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