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隣人の言葉◆やごとなき僧正、雲に住む山人すら、この 一筋は踏みとめがたくやありけん(一茶)

 鎌倉円覚寺教導日本橋に晒す。
 玉の盃、底なきがごときと言へど、色好むは人性にして、
好まざるは獲麟よりも稀なり。あるは染殿の姫を思ひ、又は
物洗ふ女に迷ふ。やごとなき僧正、雲に住む山人すら、この
一筋は踏みとめがたくやありけん。
 僧教導は仏道のいさをしも九五近き身の、戒を破りし罪と
なん、巷に面をさらさるる。余所目さへいとほしく、にがにがし
くぞ侍る。

   雪汁のかかる地びたに和尚顔


〔鎌倉円覚寺教導日本橋に晒す〕 女犯の僧は日本橋の橋詰めに三日さらし、その後追放された。
〔玉の盃、底なきがごとき〕 『徒然草』第三段を踏む。
〔獲麟〕 「獲麟」は想像上の動物麒麟をとること。たいそう稀なこと。
〔染殿の姫〕 染殿の后。藤原明子(アキラケイコ。文徳帝の女御)。紀僧正(真済)が藤原明子(染殿后)に一目惚れした結果病死し、死後紺青色をした鬼、あるいは天狗と化して后(明子)のもとに現れて悩ませたので、比叡山無動寺の相応和尚に退治されたという逸話がある(『古事談』巻三・『宝物集』巻二)。紀僧正(真済)は空海の高弟で『性霊集』の編者でもあり、文徳帝の信頼も篤かった。染殿は清和天皇の母でもある。
〔物洗ふ女〕 久米仙人に神通力を失わせた女(『今昔物語集』巻十一)。
〔九五〕 キュウゴ。易の卦で最上位。天使の位。

【解題】 小林一茶が相生町五丁目(東京都墨田区緑町一丁目)の新庵(借家)に入った、文化元年の暮れの作。四十二歳。一茶と鎌倉との関わりを調べていたら、ふと目に飛び込んできた。それで備忘に書き留める。
by bashomeeting | 2012-02-21 17:39 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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