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ふれあい塾講座記録(転載)◆芭蕉が教えてくれたこと

   芭蕉が教えてくれたこと-『おくのほそ道』に学ぶ

 今日は初登場の東洋大学文学部日本文学文化学科教授 谷地快一先生による標題の講座です。先生は「芭蕉は1689年に150日間、東北・北陸を巡りました。そして1702年に、多数の俳句が織り込まれた『おくのほそ道』が刊行されました。この『おくのほそ道』を丁寧に読むと、この旅は、単に<行って戻ってくる>旅ではなかったことが分かります。今日はその理由をお話しします。
芭蕉は人生後半の10年を、旅に充てましたが、彼は人生をどう捉えて旅をしていたのか。それを理解頂ければ、きょうのお話は成功です」と、前置きされて、以下のようなご説明をしてくださいました。

1 人生の捉え方
日本の教育は、『方丈記』序にあるような人生の捉え方を教えてきました。『方丈記』序の無常観や諦観を読んでいると、気が滅入ってきませんか? 寂寞たる無常観ではなく、もっと生き生きした人生観や生き方があるのではないでしょうか?

2 旅の捉え方
『おくのほそ道』序では「月日は百代の過客にして、行き交う年も又旅人也」が有名です。ところが平成8年、250年振りに芭蕉自筆の『おくのほそ道』が発見され、「行き交う年」の箇所には推敲の跡があり、この下張から「立ち帰る年」という記述が見つかりました。

「立ち帰る」とは、行って戻ってくることを意味しますが、「行き交う」とは、逢って別れることです。逢って別れることに、スタ-トやゴ-ル地点はありません。「行き交う」とは、行く年・来る年、常に繰り返すことです。芭蕉はこのように、時間の流れを捉えていました。彼の『おくのほそ道』は、「立ち帰る」旅の本ではなく、「行き交う」旅でありたい、と願う作品だったのです。『方丈記』に比べて、なんと前向きな思考でありましょうか。

3 連句について
(ここで先生は、連句の構成について解説され、『伊勢物語』、『遍昭集』、『西鶴大句数』などで付合の実例を紹介されました)
芭蕉は、「5・7・5」に「7・7」を付ける連句によって、この「行き交う」旅をしました。この旅での土地の人たちとの連句回数は合計30数回に及んでいます。

4 俳句について
このような連句(俳諧の連歌)の文化は、明治以降、沈潜化してゆきました。そして俳諧(和歌)の発句(最初の5・7・5)が独立した俳句が盛んになってきました。これは、自我中心の欧米文化の流入で、仲間と一緒に作る連句は時代に沿わない、という評価が広がったのが原因です。
しかし、5・7・5のあとに、7・7をつけたくなるようなことはないでしょうか。「逢って別れる」旅、「再生を繰り返す終わりのない時空」を考えるのもいいのではないでしょうか。

講師は、以上のようなことを、具体例などを示し、ユーモアを交えて、極めて明快に説明されました。満席の受講者も十分理解でき、俳句などへの関心も高まったようで、以下は参加された方のご感想の一部です。(小野)

・色々と知らなかった事を知ることができ、人生のゴールは無いという考え方が良かった。
・松尾芭蕉の名前と名句の少しは知っていたものの、俳句に関しては全く無知だった。今回の講演で芭蕉の「おくのほそ道」が伝えたかった人生の流れ、人と人との交わりが旅であり、彼の云いたかった点であり、それが連句にも生かされていることを初めて知った。これから、もう少し芭蕉と俳句・連句を勉強してみたくなった。俳句に「七七」を付けることが出来るということを初めて知った。第2回目の講演が是非聴きたいです。
・自分には縁遠かった俳句の世界が身近になりました。素晴らしい講座でした。芭蕉自筆の「写し本」拝見したが、あまりの達筆と字の美しさに感銘を受けた。ユーモアをまじえてお話しが良く分かり、楽しい講座でした。またの講座お待ちしています。

【解説】 これは、たまたまネットで遭遇したボクの講演の要約である。ネットのタイトルは「ふれあい塾あびこレポ-ト」。思いおこせば昨年の十月二十四日(月)、なつかしい常磐線に乗った。「ふれあい塾あびこ特選公開講座」なる企画で我孫子市へ話しにでかけたのだ。題は「『おくのほそ道』に学ぶ―芭蕉が教えてくれたこと―」。この記録は聴講者のお一人(小野さん)がまとめてくれたようだ。ボクは講演に際して詳細なノートを用意しないから、自分でもどの程度の話をしたか、相手に通じたかどうか、明らかな記憶はないのが普通。よって、ありがたく転載させていただく。講演が好きか嫌いかと問われれば、嫌いと答えてきた。理由は、初めてお目にかかる人々に、一方的にしゃべるのはストレスそのものだから。大学の講義のように、不足があれば次回に追加したり、聴講者の習熟度を確かめたりできるケースはその限りではない。しかし、職場から派遣されたり、公民館事業への協力であったり、そうした仕事を拒みきれない現実がある。このケースは出かけてよかった例で、後味のよいもの。まとめに苦心された小野氏によそながら感謝したい。
Commented by 昨年度の二年生のゼミ生、熊崎 at 2012-03-11 22:11 x
いきなりのコメントで失礼致します。一年時に受講した作家作品研究を何故だか思いだしました。
Commented by bashomeeting at 2012-03-13 14:13
御光来感謝。4月から、またよろしく。
by bashomeeting | 2012-03-09 11:01 | Comments(2)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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