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モンガマエに遊ぶ芭蕉◆机の銘

1.机銘
2.机銘

1.間なる時は ひちをかけて 嗒焉吹嘘の気をやしなふ
2.閑なる時は 肱を かけて  嗒焉吹虚の気をやしなゐ

1.しつかなるときは  書を紐とゐて 聖意賢才の精神をさくり
2.静   なるときハ  書を紐解て  聖意賢才の精神を探り

1.静なるときは   筆をとりて  羲素の方寸に入
2.しづかなる時は  ふでを取て  羲素( )方寸に入

1.たくミなす   おしまつき 一物三用をたすく
2.たくみをなす  おしまつき 一物三用をたすく

1.高さ八寸 おもて二尺 両脚にあめつちの ふたつの卦を 彫にして
2.高 八寸 おもて二尺 両脚に天地の    二ツの卦を   彫にして

1.潜龍牝馬の貞に習ふ
2.潜龍牧馬の貞に習ふ

1.是をあけて  一用とせむや また二用とせんや
2.是を揚て    一用とせむや 二用とせんや

1.応蘭子求元禄仲冬芭蕉書
2.応蘭子求元禄仲冬芭蕉書

〔解説〕松倉嵐蘭所持の机に与えたと推定される芭蕉の文章(元禄5年11月推定)。題目「机銘」の「銘」は銘文の意。器物に彫って、そのはたらきを称える文章。『易経』による乾の卦(地に潜んで時節の到来を待つ龍)と、坤の卦(自分の力量を知って、従順に時機を待つ牝馬)の彫りものを読み取って、その机の功用を称える。真蹟は不明なので、1.『芭蕉庵小文庫』(史邦編 元禄九刊)と2,伝真蹟写し(伊藤松宇編『続蕉影余韻』所収 軸装)を並べてみる。

〔間・閑・静など〕 富山奏注(新潮日本古典集成『芭蕉文集』)は、「間」を「時間にゆとりがあり、ひまな時」、「閑」を「閑静な心境の時」、「静」を「あたりが静寂な時」と分けて解釈する。それに従えば、〈時間にゆとりある時はゆったりくつろいで気を養い、その結果として心穏やかに至れば、書物を読んで聖人賢人に学び、環境の静寂を得て書を学ぶ〉というふうに段階的な解釈がふさわしいということになる。これは「閑さや岩にしみ入る蝉の声」(『おくのほそ道』立石寺)の「心すみ行くのみおぼゆ」に矛盾しない。

〔嗒焉〕我を忘れるさま。
〔吹嘘〕ほっと息をつく。人心地がつく。
〔おしまつき〕机。和名(女房ことば)らしい。
by bashomeeting | 2012-04-23 18:02 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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