立秋の風◆村上スクーリング始末
2012年 08月 24日
2.このたびは宿の確保に苦労した。二年前に一宿した「汐美荘」(瀬波温泉)を手はじめに、あちこち空室を搜し求めたが、海水浴時期というタイミングの悪さで、どこも満室。やむなく、村上の観光協会に相談したところ、日曜・月曜の二日間のみ駅前の「トラベルイン」(田端町)を予約できた。
3.そんなわけで、前泊の宿は新潟駅前「ホテルα-1新潟」(中央区花園)。夕食に周辺を歩いて「河童」(東大通り1) に入る。のっぺ汁とビールでは少しもの足りなくて、久しぶりに甘めの雪中梅を一杯いただく。〆張鶴も並んでいたが、村上の酒は村上にとっておくことに。翌朝「いなほ1号」で村上へ。不味かろうとは思いながら、車内販売のコーヒーを買うが、熱くて唇に火傷(七日快癒)。
4.前日に手紙で飛び入り聴講を希望したSさんを加えて、聴講者わずか六名という贅沢な教室で、初日はそこに福島から卒業論文の相談でやってきたEさんが加わる。その相談も講義の内と考えて、全員のいるところで話し合いを重ね、講義はまず『曽良旅日記』の村上の記事(六月廿八日、廿九日、七月朔日)を読むことから始めた。曽良と村上との関わりや、村上が『おくのほそ道』に描かれなかった理由を考えたのである。
5.この集中講義に合わせて、毎年『おくのほそ道』を追跡にやって来るKOさんとYAさん、さらに山形のTA君が顔を出すというので、それに合わせて今夕は懇親会ということに。場所は「漁師の家 一心」(田端町)であった。そこに向かう前に、公民館のそばにある「味匠喜っ川」(大町)に立ち寄る。土産に冷やし麹甘酒とソギを購入。
6.二日目の午前中は、村上と芭蕉・曽良との関わりを学ぶために、ジャンボタクシーを頼んで歴史散歩。「酒のかどや」(大欠)で、飛び入り参加のK&Yを降ろして、「イヨボヤ会館(内水面漁業資料館)」(塩町、600円)へ。村上藩と鮭の歴史を学ぶ。二年前の旅で、芭蕉句碑が加賀町の稲荷神社と上片町の地蔵堂に各一基・岩船町の石船神社に二基、合計四基あることを承知していたが、距離がある石船神社の見学は断念。地蔵堂の隣りにある宮尾酒造(〆張鶴)も覗いて、徒歩で「酒のかどや」まで戻り、K&Yと合流して、重要文化財の阿弥陀如来を拝みに浄念寺へ。芭蕉と曽良もここにお参りしていて、本堂のホワイトボードにはそうした史実を含めて、講義をした跡と思われる板書が残っていた。浄念寺を出て黒塀の道を歩き、割烹「新多久」(市内小町)で昼食(竹かご弁当)をとることに。午後はK&Yと別れて、午後の講義へ。村上公民館へ戻る途中で、芭蕉と曽良が二泊した宿(大和屋久左衛門。現在、井筒屋として、芭蕉と曽良に振る舞った冷麦を提供している)を左手に眺める。『おくのほそ道』の登場人物について講義。
7.三日目は『おくのほそ道』の構造に連句という文芸が与えている影響と、芭蕉の世界観について考えて、三日間の講義を終了。例年通り、受講者に初めての連句を体験してもらった。発句を案じる際に、由美さんが「今日七日は立秋」と言ったことに始まる作品である。
「秋立ちぬ」表六句
秋立ちぬ鮭に栄えし城下町 美穂
夕月淡き黒塀の道 泰子
虫の音の小さく朝市賑はひて 由美子
下に二人の弟妹 千恵
新雪の花嫁に幸多かれと 由美
毛糸編みつつ羽越本線 海紅
8.公民館の前に「まちなか循環バス」の停留所があることを教えてもらい、これで村上駅に向かって、「いなほ号」と新幹線を乗り継いで帰途についた。