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ATAMI affectionⅢ◆佐佐木信綱の歌

 『新月』          佐佐木信綱
1 ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
2 越の国恋の湊の薄月夜みちにある人皆うつくしき
3 仁和寺や花散る雨にそぼ濡れぬ、君十六の春なりしかな
4 女の童柄香爐ささげまうのぼる長谷の御寺の山さくら花
5 藤原の大宮どころ菜の花の霞めるをちの天の香具山
6 火の山の煙は高く天に立つ、我がこの心知る人のなき
7 蛇遣ふ若き女は小屋いでて河原におつる赤き日を見る
8 月の夜を黒き衣着し一むれの沈黙の尼は行き過ぎにける
9 禁制の切支丹の書よみしごとひそかにぞ読む君の玉づさ
10春の日は手斧に光りちらばれる木屑の中に鶏あそぶ
11罪人は日の目見ずとふ、君が目の囚はれ人は只君を見る
12よく踊る旅芸人が小さき子の行末かなし山の湯の秋
13朝風に八十帆にほへり津の国の敏馬の崎の初夏の雲
14秋さむき唐招提寺鴟尾の上に夕日は照りぬ山鳩の鳴く
15いにしへの巨き匠の霊ごもる執金剛を見ればたふとし
16薄き日は壁画に匂ふ、なつかしき慈眼にすがり泣かまくほしき
―近代文学注釈大系『近代短歌』(木俣修編 昭四三・一二 有精堂)より―
by bashomeeting | 2013-03-04 08:30 | Comments(0)

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