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初音は季語ならず◆二度三度初音をきゝて鍬高く 清子

 家人がすでに今年の鶯を聞いていると言っていたので、うらやましく思っていたが、今日ようやくボクにもその機会があった。犬の散歩で川べりを歩いて、ちょうど糞の始末をしているときに、竹林をぬける風に乗って、心なしか弱々しいが、明らかに数羽の鶯の声がはこばれてきた。初音といえば古来うぐいすの鳴き声だが、各人が初めて聞いた声を初音と決めてよいのだろうか。昔の人はそれが初音かどうかを、どのようにして判断していたのであろうか。

  二度三度初音をきゝて鍬高く      射場清子

 これはボクの愛誦句のひとつだが、この「初音」を鶯と決めつけることに多少の不安がある。花といえば桜という決まり事の国なのだから、気にするなといわれそうだが、この場合は少し違うような気がする。
 正保五年(1648)刊行の季寄せ『山の井』(季吟著)は「鶯」を立項して、その関連語に「金衣鳥、谷の古巣、初音、きゐる、さへづる、花に鳴く、竹に生ふる、笛、琴、歌、人く人く、法華経、三光に鳴く」などをあげているが、もしこうした記述を根拠にして「初音」を鶯と決めてしまったとすれば、軽率のそしりをまぬがれない。初音は鶯に限らないからである。傍題という語を誤用して、現在二万語を越えてしまっている季題(季語)を論理をもって整理しなければならない。その全体を異称(類義語)と関連語とに分ける元気ある研究者がでてきてほしいと思う。

〔付記〕
○松の上になく鴬の声をこそ初ねの日とはいふべかりけれ(宮内卿・拾遺・春)
○年月を松にひかれて経る人に今日鴬の初音聞かせよ(源氏物語・初音)
○鶯は時しり鳥、百千鳥、春つけ鳥(梵燈庵主袖下集)

 
by bashomeeting | 2013-03-21 20:03 | Comments(0)

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