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薬は毒、毒は薬◆若煙草くさき煙を自慢かな 一茶(九番日記)

 Ah氏が、愛煙家であった一茶を髣髴とさせる書簡発見というニュースを教えてくれた。今年は小林一茶生誕250年なので、ときどきこうした話が流れる。知己の家に煙草入れを忘れたという内容なので、喫煙が嫌われる今の世に話題性もあるのだろう。
 煙草の歴史は、薬とされる時代と、毒とされる時代を繰り返して近代を迎え、ついには国策として税金をかけ、国庫の増収をはかる仕儀となっているが、健康被害にやかましい今後はどのようになるのだろうか。

  若たばこ軒むつまじき美濃近江     蕪村(夜半叟)
  服部にしるよししてぞ若煙草        同(夜半叟)
  まだき秋を黄(ば)みそめたり若たばこ  同(夜半叟)

 「美濃近江」は美濃と近江の国境(滋賀県米原市)、「服部」(大阪府豊中市)は「今摂州服部の産を第一となす」(和漢三才図会)という煙草の名産地。「若煙草」(今年煙草・新煙草)はその年に収穫される煙草を称美する秋の言葉で、「煙草干す」という農事、つまり軒先などに一枚ずつ懸けて干す「懸煙草(かけたばこ)」、一枚ずつ縄に挟んで「編み成すごとくに」(和漢三才図会)晒し干しする「煙草編(たばこあむ)」などの語も若煙草のことである(滑稽雑談)。

  夜の香や烟草寝せ置く庭の隅      太祇(太祇句選)
  たばこ干す寺の座敷に旅寝かな     几董(晋明集二稿)

 ちなみに、種をとるために咲かせる「煙草の花(花煙草)」は初秋の言葉である。

〔付記〕
『朝日新聞DIGITAL』に宇佐美貴子の記事として次のようにある。

 今年6月(旧暦5月5日)で生誕250年を迎える小林一茶が、たばこ好きだったことがうかがえる手紙が発見された。自分のたばこ入れが落ちていないか聞いてほしいという内容。たばこが題材の句も多く残した俳人の人となりが浮かび上がる。

 手紙が出されたのは文化9(1812)年12月3日、一茶が数え50歳の頃。縦16センチ横24センチの紙に本文5行と追伸3行の簡略なもの。長野市の浅野に住んでいた門人の竜卜(りゅうぼく)に宛てている。文中にある杉丸がだれかは分かっていない。

 一茶記念館によると、竜卜はこれまで注目されていなかったが、江戸の一茶宅を訪問するなど交流があった。一茶の日記には12月1日「アサノニ入」、3日「長沼ニ入」とある。1日に浅野の竜卜宅に泊まり、3日に長沼に行ったところでたばこ入れがないのに気付いた一茶が、杉丸の所で忘れたと考え、竜卜に手紙を出したと推測される。「ついで」と書きながら「6日まで」とあり、一茶の切実ぶりが表れている。
by bashomeeting | 2013-04-01 11:56 | Comments(0)

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