ネクタイを捨てる
2013年 04月 08日
四月三日は新入生ガイダンスだったので、久しぶりにネクタイをして出かけた。滞りなく仕事を終えて、帰途の電車の中でネクタイをはずして驚いた。あちこち擦り切れて糸が垂れ、裏地が顔を出していたからだ。老眼が進んだせいもあるが、こんなものを首から垂らして、人前を一日うろついていたのかと思うとおかしかった。裏を返して製品名をみると「CREATION pierre cardin PARIS」とある。二十一歳まで働いていたサッポロ時代に買ったもので、ずいぶん御世話になった一本である。感謝しつつも箪笥には戻さず、捨てることにした。ほとんど締めることなく、きれいなままのネクタイを仕舞い込んで、思い出深い一本を捨てるというのはヘンな気持ちである。
入学の荷の白重白袴 安田巨風