この人の一篇◆葉生姜 椎名美知子
2013年 07月 22日
朝靄が地をはって
尖った葉が
シンクロナイズスイミングの
おびただしい手のように伸びていた
そのひとつをつかんで持ち上げたら
みーんなついてきて
一列に並んだ小人たちの連隊
水滴をぶるるんと振り撒いて踊りでた
夜露に濡れながら
赤い帽子をかぶった小人たちが
話しあったのかもしれない
明日の朝 みんなをおどろかしてやろうねって
なんだが父はとても楽しそうだった
小さな畑の取り立ての葉生姜
朝の光と水で洗って食卓に乗せた
葉生姜の鮮烈な香りが誘う
楽しいことが始まりそうなうずき
また出会いたい
私の好きな夏の朝の感覚
〔解題〕詩誌『沙漠』№271(平成25年6月)所載。 発行者 河野正彦(〒802-0826北九州市小倉南区横代南町3丁目6-12)