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この人の一篇◆墓参り  椎名美知子

 墓参り  椎名美知子

湿った土の上で
丸めた新聞紙の端を
赤い炎が縁取って
かざした線香が香り立つ

山あいのお墓の細い道
暖冬の今年
もはや若草が萌えている

街の喧騒から遠く
父母は何を語らっているのだろう
父の十三回忌
母はもう二十年になる
私たち三人の子と家族
数名の親類

足もとの新聞紙が
白く縮れながらまだ燃えている
弟がひしゃくの水で
幼い時と同じ手つきで火を消した
〈焚火の火 消えてるかな〉
夜 ふとんに入ってからも
起きだして確かめにいっていた
兄の背にも叔母の背にも
時がよみがえって
焚火の匂いが通り過ぎた

線香の紫煙が
ゆるやかに
杉木立に消えて行く

▶▶▶詩誌『沙漠』№270(平成25年3月)所載。 発行者 河野正彦(〒802-0826北九州市小倉南区横代南町3丁目6-12)
by bashomeeting | 2013-07-22 11:20 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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