この人の一首◆高須賀志津子歌集『身のほとり』
2014年 09月 08日
母の手をとりて繰言しばし聞く子守歌のごと昔偲びて
母似とぞ言はれたりける手鏡に映れる顔に「会ひたい」と言ふ
宮島の赤き鳥居を眺むれば遠足の日のなつかしきかな
思ほえずウクレレの音に想ひ出づハワイにピアスあけしことなど
▶▶六日の論文を読む会で、作者に託されたと言って、山茶花さんが高須賀志津子歌集『身のほとり』をくれた。平成二十四年六月刊、私家版である。彼女にお目にかかることがなくなって十年以上になるであろうか、所収歌はそれ以後の暮らしを詠んだものと思われる。井本昌樹氏が筆をとる「『身のほとり』によせて」に「短歌は人の体温にいちばん近い詩型と言われる」と書いているが、まるでお付き合いが続いているかのように為人が伝わってきて、なるほどと思う。作者は書を能くし、かつて自筆自画の扇をいただいていることを思い出した。今思えばそれがお別れのサインであったか。扇面に次の拙句をしたためてくれたもので、天下一品とあっては普段使いもままならず、大切にしまいこんだままであった。
本当は人間が好き杜鵑 海紅