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この人の一篇◆ブナ原生林  椎名美知子

 ブナ原生林  椎名美知子

篠突く雨
清冽な一筋のながれになって
ブナの木肌を急ぎ急ぎつたう

腐葉土はたちまち水をはらみ
つやつやとブナの若木
林のすべてが語り始めた

低地の沼では
妖精たちの舞い
霊気が他者の介入をはばむ

時雨が去って
林は微笑みとなって香り立つ
喧騒と宴の後に来るもの

育みやがて朽ち
次代に受け継がれ

ブナの高みの果ての碧
一時の青も永遠の青も同じかもしれない

▶▶詩誌『沙漠』№276(平成26年12月)所載。発行者は平田真寿(〒802-0074北九州市小倉北区白銀2丁目1-5-302)。この詩を読んで、昨夏の旅で佇んだ「美人林」(ビジンバヤシ。十日町市松之山)を思い出した。変な名前なので、たどり着くまで想像できなかったが、丘陵に生い茂る樹齢約90年ほどのブナの群生地であった。驟雨と呼ぶには激しく長すぎる雨で、同行の多くはバスで雨止みをしたが、ボクは携行した小さな折りたたみ傘をひろげて、雨がせせらいで下る坂を登り、林間の沼を見下ろせるところで、キノコのように屈み込んだ。そして傘をはみ出た雨に下半身を濡らしながら、「腐葉土はたちまち水をはらみ」「林のすべてが語り始め」る声を聞き、「育みやがて朽ち」ゆく時間を思い、「一時の青も永遠の青も」同じであると感じていた気がする。2014年 09月 12日付の「湯呑みの素十句◆家持のゆかりのいで湯薄月夜 素十」というブログで書いた卒業生との旅のひとこまである。


by bashomeeting | 2015-03-03 05:47 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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