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戦争の放棄Ⅴ◆反戦歌の誕生

 後期が始まって、日本の詩歌の講義をどんなテーマで始めようかと考えた末に、今年は九月二十七日にあたることを確認しつつ、仲秋の名月の話をした。陰暦と陽暦にある四十数日の季感のずれを説き、雪月花を賞美する歴史を講じ、月が人の心をどんなふうに浄めてきたかを話した。そして、長い日本文学史のなかで、反戦歌という美しいカテゴリが成立したのは60年安保闘争と70年安保闘争のはざまであって、ちょうどベトナム戦争の時期にあたる。そして、それはそれまでの長い日本文学史に一度もなかったもののように思うと結び、谷川俊太郎の「死んだ男の残したものは」を読んで聞かせた。

 死んだ男の残したものは
               作詞 谷川俊太郎
               作曲 武満 徹
死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった

死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった

死んだ子どもの残したものは
ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった

死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった

死んだかれらの残したものは
生きてるわたし生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない

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Commented by 荻原貴美 at 2015-10-05 21:08 x
絵本『わたしの「やめて」』は、戦争の本質を簡潔で明快に表現、大人の迷いを吹き飛ばす力があると感じました。
by bashomeeting | 2015-09-26 21:23 | Comments(1)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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