この人の一句◆藤井啓子句集『輝く子』ふらんす堂刊
2017年 03月 20日
新米の粥にはじまる離乳食
月見草置いて来し子の眠る頃
一泊の留守に汗疹の子となりし
友達になるきつかけのねこじやらし
人見知りする子と出かけ母薄暑
国語より算数よりも兜虫
次の手を読めるオセロの子と夜長
朝寝してまた身長の伸びたる子
水着干す時はこんなに小さくて
思ひきり切りし前髪サングラス
▶▶藤井啓子句集『輝く子』。「序に代えて」として稲畑廣太郎が出版を祝う文章を寄せる。作者自身による「あとがき」がある。「著者略歴」によれば、兵庫県で定年まで勤め上げた国語教師。五十嵐播水、稲畑汀子ほか、一貫して「ホトトギス」系に学んで今日にいたる。いただく句集の作者と筆者は一面識もない場合が多く、この作者も例外ではないが、まれに芭蕉会議サイトに書き込まれる文章を読んで、気息に同じものを感じとっていた。句集を贈られて、そのわけが「ホトトギス」系にあると判明。「行きかた」が同じなのであった。阪神・淡路大震災の罹災者で、その試練をさけてこの作者の境涯を語ることは難しそうだが、ここには(思うところあって)作者の身辺を昇華させた(と思われる)数句を紹介。ふらんす堂、平成29年3月刊。