姿情を求めて9◆卒業祝いとしての吟行体験

 この3月に卒業して郷里に戻る俳諧ゼミの女子学生Sが俳号をほしいという。句会体験が先だよと説いて、2月の白山句会(隅田川畔)に誘った。誘惑の顛末は以下の通り。

1)当日11時(投句〆切り3時間前)に本所吾妻橋駅で待ち合わせて、桃青寺(臨済宗妙心寺末。東駒形3)に向かう。
2)歩き始めに、Sに用意してきた「その日にふさわしい季題(季語)のメモ」を渡す。「春浅し」「あたたか」「春風」なんてのを書いてあったと思う。歩きながら、「まず世間を見廻して、このメモにあるような今日らしい季節の言葉をさがせ」と指示。
3)次に、「季題を発見したら、それをポケットにしまいこめ」と指示。
5)さらに、「季題のことは忘れて、目に飛び込むもの、心に浮かぶことを手帳に書き留めよ」と指示。
4)ちょっと迷子になったので、地元の婦人を頼って桃青寺に辿り着く。この寺はもと定林院、東盛寺と名乗る時代を経て、いま芭蕉山桃青寺という。芭蕉の名をそのまま使っているわけは、素堂(1642~1716)の門人で、俳諧撰集『五色墨』のメンバーであった長谷川馬光(1685~1751)がここに芭蕉堂を建てて祀り、芭蕉顕彰に尽くしたことによる。芭蕉が何度も訪れたという言い伝えがあるが、芭蕉研究史にときどき見かける付会であろう。
5)昔は広かったのだろうが、いまは小さくまとまった寺域には山茶花が咲き残っていた。馬光の墓を探して拝み、隅田川畔に戻り、駒形橋から吾妻橋の先まで歩いて腹ごしらえ。
6)会場の「すみだリバーサイド・ホール」を確認して、海舟の像が何で此処になどと近づいてゆくとMさんと、上方から駆けつけたKさんに遭遇。御一緒して枯蔦の枕橋を渡り、隅田公園に入ると、句会仲間が少しずつ合流して、幹事のYさんお勧めの牛嶋神社参り。撫で牛を撫で、焼失した北斎画の白黒写真をながめて、それぞれ句作。
7)句会場に入ると、挨拶はそこそこに、みんな一人に戻る。見て来たものを整理し、ポケットにしまいこんだ季題をとりだして17音にするためだ。ここからは自分だけの日本語表現。その句会の結果がどうであったかは、芭蕉会議サイトの「白山句会」から「句会報告」へ入って、編集長御苦労の記録を参照のこと。
8)ところで、初めての句会体験をしたSは「あたたかな道に迷子の猫二匹」「山茶花と木魚をきいて桃青寺」などと詠んでいた。猫は見なかった気がするが、本堂から読経と木魚の音が聞こえていた。誘惑の手順に素直で、まずまずの出来ではなかったかと思う。「迷子」とか「木魚」とかいう俳号を進呈したいが、たぶんことわられるであろう。

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by bashomeeting | 2018-03-06 15:44 | Comments(0)

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