この人の一句◆中村ひろ子句集『ドロップ缶』ふらんす堂
2019年 01月 24日
神仏と遊ぶ鳥獣戯画の夏
心根の透けてきさうな夏衣
くづ金魚三つの命掬ひけり
再会の約束はせず麦酒つぐ
羽子板の少女横向く歳の市
半壊と便りにありて薄暑かな
かしは手を打ちて蜥蜴に一礼す
山神に分けて貰ひし歯朶飾る
弁天の水馬をのけ銭洗ふ
秋の来る方を見てゐる風見鶏
▶▶中村ひろ子句集『ドロップ缶』〈未来図叢書第207篇〉(2018.9.19、ふらんす堂)をいただいた。ひろ子さんとは東洋学研究所のシンポジウム(2019.1.12)で再会。ボクの「日本の詩歌と釈教―芭蕉連句を軸にして―」という話を聞いた感想を手紙に添えてくれた。そこに、「芭蕉の仏教観とは本当に目から鱗…」「まだ鎌倉新仏教が誕生していない時代に、和歌を手にしたまま成仏したいとあがいている鴨長明がかわいそうになってきた」とある。熊本大学を出た才媛で、大学の学生句会で俳句に出逢い、「未来図」の人々との吟行で研鑽。仕事・結婚、そして子育てという生活に、一時、俳句を諦めたようだが、近年再開して、それ以降の句を収める。鍵和田秞子の序、作者自身のあとがき。俳人協会会員。