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姿情を求めて15◆素直は上手にまさる

 必ずしも適切とは思えないが、ほかに思いつくものがないから定命とか天寿ということばを用いる。3月16日、芭蕉会議発足以前からのお付き合いであるKさんが天寿を終えられた。俳号は山茶花、ボクの命名である。
 平成24年12月15日(土)と16日(日)の1泊2日で恋瀬川・霞ヶ浦で1泊の吟行会をおこなった。現地集合というプランで、宿に定めた「いづみ荘」(石岡市高浜)に集まった。女将さんが床の間に掛けてくれていた高野素十の色紙「湖の月の明るき村に住む」を見て、その句碑を見に高淵寺観音堂に出掛けた。この日は朝から冬の雨が降ったりやんだりで、句碑も、その句碑を包む山茶花も濡れて、いきいきとして見えた。
   山茶花にたつぷりの雨素十句碑
 Kさんのこの句は、その際の作で、宿に戻って行われた句会で最高点を得た。ボクは山茶花を名乗ることを勧めた。
 彼女は会社勤めの若いころに、少し俳句をたしなんだことがあると話していた。OLをしながら俳句会に参加していたとは、まことによい世の中であった。その後、やめてしまう時代があるにしても、実は二十代、三十代に好きになって、熱中したことがあるのは財産である。その財産は「素直な眼」のように思う。彼女に対するボクの句評はつねに〈素直でよろし〉という一言であった。素直は境地であり、人間の出来である。人間が出来ていれば、相応の句が生まれる。これは芭蕉の教えでもある。〈素直は上手に優る〉といって誤るまい。
 だれかを誘って、「いづみ荘」を訪ねたくなった。 合掌

春といふ魔物に押され病くる
旧正や半襟の白掛けなほし
春雷にすがる人なき暮らしかな
江ノ電をフリー切符で春の海
流氷のひしめきあふも寂しげな
存分に学び遊びて卒業す
少しだけ菫くくりて髪飾り
ローカル線蓬のかをりコトコトと
期日前投票すませ夏句会
子等帰りゆきて一人や夏の果て
たたかれし記憶なき父セルコート
合宿の白靴山のやうに脱ぎ
ハート絵馬手児奈霊堂青葉ゆれ
目にかかる髪をはらひて野分行く
また一つ露ころがりて葉に遊ぶ
白樺のふところふかし秋の湖
祝ふこと久しき硯洗ひけり
落日の蔦美しき夜学の灯
焼米に少し籾の香あるやうな
ポケットに何やら後の更衣
子規の部屋に師走の日ざしやはらかく
年越しの一泊楽し恋瀬川
節分の決意あらたに万歩計
水揚げや河豚は大きな歯を切られ
なんとなく猫に目をやる漱石忌
箸先でころころ遊ぶなめこかな
by bashomeeting | 2019-03-27 11:23 | Comments(0)

芭蕉会議の谷地海紅(快一)のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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