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姿情を求めて17◆俳句は、いま生きていることを喜ぶこと

 昨年、NHKのドキュメンタリー「ファミリーヒストリー」の「中山エミリ、 ルーツは地中海・マルタ島 日本への帰化」という番組を見た。英国人ロジャー・ジュリアス・イングロット氏の生涯を追跡するもので、俳句仲間のM氏一族が女優中山エミリの親戚にあたり、御自身も番組でお話しすると聞いたからだ。
 それでしみじみ思ったことは、誰でも自分のルーツを辿ると、そこに大きな歴史があらわれるということであった。俳壇のような世界からみれば、たしなみ句会はちっぽけきわまりないが、そこで句作する人の人生は芭蕉・蕪村・一茶や子規のそれに少しもひけをとらない。ボクは本気でそう考えている。
 たしなみ句会は、瓢箪から駒のように生まれた。生涯学習センターの永山邦子さんが初めに講師の御願いをしたのは聖心女子大学に勤める友人F氏であった。ただ永山さんの意図は講座の終わりには俳句を嗜む気持ちがうまれて、それが日立の人々の日常の支えになることにあったため、友人がボクを紹介してあの講座が成立した。この人生の選択が正しいかどうかはわからないが、ボクの四十年は研究と句作を両立させるというものであったからだ。出かけてみると、そこに古い俳句仲間の勝人さんや君江さんがいた。なんだか、偶然とは思えないものを感じたのである。
 一年間にわたり申し上げてきたことは。俳句は事実を〈美しく〉切り取り、言い取って、今生きていることを喜ぶという、とても身体によい詩歌ということである。その思いが届いて、一周年という時間を刻んだことは、いつか誰かにとって、それはボクらの次世代かもしれないし、もっと先かもしれないが、捨てがたい歴史になることをボクは信じて疑わない。


▶▶これは『たしなみ俳句会』(1周年記念句集、平28年1月24日杉本勝人跋)に求められた「たしなみ句集に寄せて」(平29.1.22稿)の全文です。断捨離の日々に入ったゆえ、散逸を恐れて、しばらくここに残します。


by bashomeeting | 2019-04-04 12:05 | Comments(0)

芭蕉会議の谷地海紅(快一)のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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