流行作家の椅子◆『東京新聞』「筆洗」(平18.5.2)より
2020年 04月 14日
▶▶これは「第2回 芭蕉会議の集い」(平19.6.17)で「山の裾野に暮らす」という話をした際に胸のうちにあった文章である。これを例にして、芭蕉会議を始めるのは「お山の大将」になるためでないということを話した気がする。
話はかわるが、恩師から「世に出たいと思うならば、研究などやめることだ」といわれたことがある。ボクをたしなめるためではなく、先生が自分の姿勢を確かめるような口ぶりだった。ボクはまだ駆け出しの二十代だったが、今日まで、この教えを破ったことはない。頂上に用意されている椅子の数を数えて、掛け替えのない暮らしを粗末にはできないと考えたようだ。