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流行作家の椅子◆『東京新聞』「筆洗」(平18.5.2)より

 作家の夢枕貘さんがまだ二十代のころ、ある編集者から「流行作家の椅子はいくつあるかご存じですか」ときかれた▼「知らない」と答えると「十五です。いつの時代も十五しかない。誰かが座れば誰かが落ちる。そのうちの一つに座ってみませんか」と持ちかけられた。「実は今、椅子が一つ空いているのです。ついしばらく前まで新田次郎という方が座っていた椅子です」という▼この話は、柴田錬三郎賞に輝いた夢枕さんの傑作山岳小説『神々の山嶺(いただき)』(集英社文庫)の「あとがき」にあるのだが、すごい口説き文句があったものだ▼新田さんが亡くなられた直後の話で夢枕さんはそれから十五年がかりで『神々の山嶺』を仕上げる。(下略)

▶▶これは「第2回 芭蕉会議の集い」(平19.6.17)で「山の裾野に暮らす」という話をした際に胸のうちにあった文章である。これを例にして、芭蕉会議を始めるのは「お山の大将」になるためでないということを話した気がする。
 話はかわるが、恩師から「世に出たいと思うならば、研究などやめることだ」といわれたことがある。ボクをたしなめるためではなく、先生が自分の姿勢を確かめるような口ぶりだった。ボクはまだ駆け出しの二十代だったが、今日まで、この教えを破ったことはない。頂上に用意されている椅子の数を数えて、掛け替えのない暮らしを粗末にはできないと考えたようだ。


by bashomeeting | 2020-04-14 16:26 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。
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