ドラマにしろニュースにしろ、TVに映し出される映像を見ていて、これは私の目が見ているわけではないと思って、カメラマンの目がみているのだと思って、電源を切ってしまうことがある。切ることはしないまでも、そういう神経を忘れたくない。そんなふうに暮らしていると、私と同じように生きているひとりに出逢った。昭和57年のことゆえ、今は昔と言うべきか。直接お目にかかったわけではない。正確にはその人の詩に出逢ったのだ。作者の名は井上繁利さん、当時十三歳。詩集の名は「新選対訳『どろんこのうた』」(北星堂書店 昭和57・1)、編者のひとり郡山直先生とその御友人本田徹夫先生と御縁があって一冊いただいたのである。その簡明さに驚嘆した郡山先生の英訳も書きとどめておこう。
かがみ
ぼくは かがみを みたらいけん
ぼくは かがみが こわいけん
みんのです
ぼくのかおが かがみに うつったら
ふたりが おるけん
こわいです
The Mirror
I don't look into the mirror.
I am afraid of it.
So I don't look into it.
When my face is reflected.
In the mirror, there are two me's,
So Iam afraid of it.