失せもの出づる―平泉紀行
2006年 10月 02日
折よく毛越寺はあやめ祭りで、平安の昔をしのぶ延年の舞には全国から人々が集まっていた。終日の五月雨も長く記憶に残るだろう。講義の締めくくりは、例年通り連句の試み、表六句を記録にとどめよう。
人の手で開ける列車や風薫る 宇田川良子
あやめ祭りをしつらへて待つ 小林 吉郎
寺廂涼しき月を押し上げて 谷地 海紅
なにぶらさげて帰る里の子 西村 通子
花すすき祖母にわたせば微笑める 原田 富江
ちちろ鈴虫ちちろ鈴虫 執 筆
もう一日ひとり旅を愉しむと言う喜美子さんと別れて帰途につく。新幹線では、車両を同じくする数人で一句会。喜美子さんは不在投句。
日常の旅へとかはる青田かな 正 浩
駅前の鉄風鈴に芭蕉の句 喜 美
木下闇芭蕉の句碑の読み難し 由貴子
空広し無量光院跡青田 海 紅
洗ひ髪草の匂ひの夜風かな 文 子
車中より青田の見ゆるわつぱ飯 正 浩
延年の舞 三句
童子舞ふ鈴音やさし五月雨 嘉 子
五月雨と童子の床を踏む音と 喜美子
麻衣童子は風を入れて舞ふ 文 子