美しい四月
2007年 04月 07日
放映の日は、思い立って家族を引き連れ、鎌倉と横浜に遊んだ。鎌倉は花曇りで、翌日の横浜は半袖姿を見かける絶好の行楽日和、運よく横浜の蒔田町の和風旅館に泊まることもできて、存分な桜と歴史と食事を愉しんだ。母の死と向き合っていた昨年までは考えられない時間が流れた。それは豊かだが淋しい時間であった。
四月一日に帰宅すると、案の定、数枚の葉書と手紙が舞い込んでおり、留守番電話が点滅し、電子メールがいくつか届いていた。おおかたはTVを通した再会を喜んでくれるものであった。丹後の俳人AIさんからの葉書に〈カレンダーの絵や写真が俳句の説明になっているのを見るたびに俗っぽさを感じ、父母に聞いた俳画と違和感を持っていたが、すっきりした〉とある。私にとって、これ以上ありがたい感想はない。私の見解はまだ検証を重ねるべき仮説だが、世の片隅にある論文に目をとめてくれた番組のスタッフに感謝している。
AIさんの絵はがきには〈丹後へ来る時は連絡しなさい〉ともある。昨年、東京でお目にかかった時に、蕪村の母親伝説がある丹後のことで話が弾んだことを思い出した。
帰宅した日は一重の山吹が三分咲きに、満天星つつじが一つ二つ花を垂れ、ヒトリシズカが仲良く群れ咲いていた。昼間は野原に遊びに出掛けているツバメも、夜にはきちんと巣に戻って眠る。美しい四月が始まっている。
空をゆく一かたまりの花吹雪 素十