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戦前とはいつのことか ― 狂気の近代 ―

 年に一度のこの旅行も十二回目になるんですね。いろいろな歴史や文学散歩を重ねて、ことしは会津だと案内をいただいて、〈私どもの受けた歴史教育はところどころ間違っている、ということを教えてくれる会津で、皆さんに再会できることを嬉しく思う〉と返事をしたら、幹事のHirooさんから〈今年は歴史の話をせよ〉という御下命があった。それで少しお話をしているわけですが、下段のように戦争を一覧してみると、「モノの見方」を少し変えなければいけないと思っていただけるのではないでしょうか。
 戦前というとき、第二次世界大戦の起こる前、つまり昭和十四年八月以前のことを思い浮かべますよね。ドイツ軍がポーランドに侵攻した九月一日が大戦の始まりと教わっているからです。それで、近代史の研究者でもないかぎり、それ以前は〈ナンニモ、ワルイコトヲ、シテイナイ〉と受けとめている。
 でもね、明治以後の歴史全体が実は戦争と同義語とも言うべき時代であった。そこで、およそ二百五十万人の父や夫、息子や兄や弟が自分の人生を全うできずに戦死していった。とすれば、戦前とは第二次大戦の前などというのはまやかしで、近代の全体が戦争の時代だったことになる。漱石や晶子、啄木や光太郎、そして朔太郎や三島もこうした狂気の時代に生きざるを得なかった人々なわけです。進化論的に、近代文学をそれ以前より秀れた作品の集積と考える場合は、こうした時代の異常性を踏まえた上でのことでなければいけない。
 戦前とは明治維新の前、少なくとも二百七十年にわたり戦争をしなかった江戸時代をさす。これと言った戦争を避け続けた知恵だけでも評価し直した方がよい。江戸時代、すなわち徳川の近世とは、本当に葬るしかない時代だったのか。つまり鎖国にも学ぶことはあるのではないか、ということなんです。これは、いろんな国があっていいという話でもあります。個人主義の確立したという国々ならばなおのこと、他者の尊厳を忘れてはならないという話でもあります。自我が確立して長いはずの西欧がどういう理屈を付ければ植民地主義を肯定できたのかということなんです。


1,慶応四年(1868)  戊辰戦争(倒幕派=英国×公儀政体派=仏国)
2,明治六年(1873)  〔徴兵令〕*20歳以上男子。抽選。3年。当主、嗣子、金持ち、役人、官立校生、養子に免除)★
3,明治七年(1874)  台湾出兵
4,明治十年(1877)  西南戦争(征韓論派の反乱)
5,明治二十二年(1889)  〔大日本帝国憲法〕*天皇に国土人民統治権
6,明治二十七年(1894)  日清戦争(朝鮮覇権)
7,明治三十三年(1900)  北清事変
8,明治三十七年(1904)  日露戦争(満州・韓国併合)
9,大正三年(1914)    第一次世界大戦(権益争い)
10,大正十四年(1925)  〔治安維持法公布〕*共産主義抑圧策▲
11,昭和二年(1927)   済南事変(権益争い)
            〔兵役法を定め徴兵令を廃止〕★
12,昭和三年(928)   〔治安維持法改正〕*言論思想の蹂躙▲
13,昭和六年(1931)   満州事変(中国東北侵略戦争)◇
14,昭和十二年(1937) 日中戦争(中国全面侵略戦争)◇
15,昭和十四年(1939)  第二次世界大戦(権益争い)
16,昭和十六年(1941)  太平洋戦争(日本×米・英・オランダ・中)
17,昭和二十年(1945)  広島・長崎に原爆投下・ポツダム宣言(無条件降伏)
18,昭和二十一年(1946) 〔日本国憲法公布〕*国民主権・戦争放棄
19,昭和二十五年(1950) 朝鮮戦争(韓=米国×鮮=中国)
20,昭和四十一年(1966) 〔治安維持法全面改正〕▲
21,昭和四十五年(1970) 〔治安維持法廃止〕▲
by bashomeeting | 2007-09-13 06:10 | Comments(0)

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