談林俳諧とは何か
2008年 01月 06日
ところが、当日は運悪く他所で公開講座を命ぜられて、シンポジウムには出られなかったので、参加した人々に感想を聞いて廻った。その中で心にのこったのはパネリストの一人中嶋隆氏の俳諧史観である。氏は「西鶴の俳諧―軽口から小説へ―」というタイトルで発言し、玄人のものであった仮名草子が浮世草子の時代になって素人との間に境界線がなくなったように、談林俳諧も専門家のものであった貞門俳諧が好事家との境界線を取り払った結果とみてよい、という類の発言をされたという。散文と韻文の歴史がパラレルであるということは、従来言われていそうで、あまり言われていないのではなかろうか。
ただし、では浮世草子の完成度に見合う談林俳諧、つまり〈伝統的・和歌的抒情から脱却して新しい俳諧の可能性を切り開いた功績〉(明治書院『日本古典文学大事典』)をどのような西山宗因(梅翁)風作品に見ればよいのか。これについては聞き漏らしたままである。