いちど連句を思い出してみる―その魅力を未来に創造するために―
2008年 01月 17日
山荘の湯 東 明雅 捌
山荘の湯をまづ浴びて残暑尚 健 治
月を育むごとき夕風 海 紅
蜻蜒舞ひ遊ぶ子供の影もなし 文 人
浜より帰る舟人の声 真 彦
焼鳥につぎし熱燗舌を焼き 徒 司
重ね着の上頬被りして 明 雅
減反の年の瀬きびし出稼ぎに 治
上野の駅の町騒の朝 彦
先生のネクタイの色気になると 同
どこかしほらしツッパリの恋 治
てらてらと手垢に光る百度石 司
廃庵一つ残る山里 紅
夏の月水疱瘡をわづらひぬ 人
目が明いてみる辛き世の中 同
リャンピンをつもればリーチ即かけて 治
離れの人が妙に気になる 彦
下駄の音生まれて花の雨に消え 紅
淀んだ沼に泣きべその蝌蚪 司
爪切りて深爪になる遅日なり 彦
浮世之介に書きし誓文 治
逆さまに吊されたるは妻か何 彦
狸見つけし土肥の温泉 司
落選に父祖代々の家を売り 紅
帰るあてなき留学の画家 同
「ひまわり」の第三号は宇宙へ 治
眼を楽しませ肌をやく午后 司
ジャズダンス河童の如く跳びはねる 彦
襟巻トカゲ遠き故郷 紅
東京の砂漠に赤き月かかり 司
屋上に佇ち鳩を吹く夕 人
冬物を出す算段に秋たけぬ 司
渋茶を汲んで労いやし合ひ 人
而して愛用の杖ぼろぼろに 紅
神に祈りし辞書の出版 彦
大学の才子集めて花の宴 雅
毛深き胸を春の蚊が刺す 執 筆
昭和五十九年八月十日 連衆 大畑健治
於 箱根中大湯河原寮 谷地海紅
二村文人
宮脇真彦
杉内徒司