世阿弥元清作「恋の重荷」◆「第21回 としま能の会」(東京芸術劇場)
2008年 09月 08日
女犯の罪を犯すことなく老齢を迎えた志賀寺上人だが、美しい京極御息所を見て、ついに恋に落ちてしまう。上人は御息所の庭に、杖にすがりながら一日一夜立ち尽くす。そして御息所が御簾の前に上人を招くと、彼は御息所の手を、しばらく、うやうやしくささげたあと、手をほどいて立ち去ってゆく。そして数日後、上人は入寂するという話である。
少年期の恋と、「恋の重荷」や「志賀寺上人の恋」などの老の恋が、その精神の透明性において深くつながっている、そんな気がしたのである。