人気ブログランキング | 話題のタグを見る

世阿弥元清作「恋の重荷」◆「第21回 としま能の会」(東京芸術劇場)

 豊島区の古典講読の会「かげろう金曜会」の企画で、「第21回 としま能の会」(東京芸術劇場)に出かけた(8月31日)。宝生流舞囃子「放火僧」、和泉流狂言「六地蔵」、観世流 能「恋重荷」。それぞれ、学ぶところ少なくなかったが、身分違いの女御を恋してしまう菊守を諦めさせようとして〈これを持って、庭を百度、千度とまわれば女御を拝ませてあげる〉という難題の重荷がきれいな張りぼてであったのは可笑しかった。そして胸が傷んだ。少年時代に読んだ、三島由紀夫の短篇小説『志賀寺上人の恋』が脳裏で重なったからだ。
 女犯の罪を犯すことなく老齢を迎えた志賀寺上人だが、美しい京極御息所を見て、ついに恋に落ちてしまう。上人は御息所の庭に、杖にすがりながら一日一夜立ち尽くす。そして御息所が御簾の前に上人を招くと、彼は御息所の手を、しばらく、うやうやしくささげたあと、手をほどいて立ち去ってゆく。そして数日後、上人は入寂するという話である。
 少年期の恋と、「恋の重荷」や「志賀寺上人の恋」などの老の恋が、その精神の透明性において深くつながっている、そんな気がしたのである。
by bashomeeting | 2008-09-08 10:27 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


by bashomeeting