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写生3

一、俳句をものするには空想に倚ると寫實に倚るとの二種あり。初學の人概ね空想に倚るを常とす。空想盡くる時は寫實に倚らざるべからず。寫實には人事と天然とあり。偶然と故爲とあり。人事の寫實は難く天然の寫實は易し。偶然の寫實は材料少く故爲の寫實は材料多し。故に寫實の目的を以て天然の風光を探ること尤も俳句に適せり。數十日の行脚を爲し得べくんば太だ可なり。公務あるものは土曜日曜をかけて田舎廻りを爲すも可なり。半日の閒を偸みて郊外に散歩するも可なり。已むなくんば晩餐後の運動に上野墨堤を逍遙するも豈二三の佳句を得るに難からんや。花晨可なり。月夕可なり。午烟可なり。夜雨可なり。何れの時か俳句ならざらん。山寺可なり。漁村可なり。谿流可なり。何れの處か俳句ならざらん。
   ―以上、子規「俳諧大要 第六 修學二期」 新聞『日本』(明28・12・7)による。
                                        但し、句読点は谷地 ―

〔俳諧大要〕俳論。明治二十八年十月二十二日「第一 美の標準」から十二月三十一日「第八 俳諧連歌」まで、全二十六回にわたる連載で、空想と写実を等価とし、両者合一のうえ「非空非実」の世界をめざすという俳句作法を説き、蕪村への傾斜を示す。明治三十二年(一八九九)一月、ほとゝぎす発行所から俳諧叢書第一編として刊行。
by bashomeeting | 2009-03-15 15:05 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


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