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「ゆきかふ」の用例

 中世文学会 平成二十一年度春季大会(於東洋大学)で総合司会を仰せつかり、いつになくすべての研究発表を聞く結果になった。中に新田奈穂子氏の「『顕注密勘』の顕昭注の成立時期について」という発表があり、その時期を『古今集注』以後、『千五百番歌合』が成立した建仁三年(一二〇三)以降であろうと推定していた。その資料から「ゆきかふ」の用例を補充することができた。以下レジュメからの転載。

顕注 夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへすゞしき風やふくらむ

 ゆきかふ空とは、行ちがふ空也。かよひぢはかよふ道也。かたへすゞしきとは、かたぐと云也。夏と秋とのゆきちがはむ道には、片方すゞしき風や吹らむとよめる也。かたへの人などいふ事もあり。
「ゆきかふ空」   ※平安時代の例:斎宮女御に二例
①〔後鳥羽院御集二三五〕 建仁元年(一二〇一)三月内宮御百首
夏と秋と行きかふ空や深けぬらんやや露おもる夜半の袖かな
②〔和歌所影供歌合 建仁元年(一二〇一)八月二〕 定家
夏と秋と行きかふ空や明けぬらむかたへもしらぬ道芝の露
②〔和歌所影供歌合 建仁元年(一二〇一)八月四〕 雅経
なつと秋と行きかふ風や吹きぬらし露ちりそむるしののめの道
④〔千五百番歌合 建仁三年(一二〇三)二○五七〕 内大臣
ふゆとはるゆきかふかぜのいけ水にかたへとけゆくうすごほりかな
 季経判:右歌、かの、夏とあきとゆきかふそらのかよひぢにといふ歌をおもひて、かたへとけゆくうすごほりとはべる、たくみにとりなされて侍り、
by bashomeeting | 2009-06-07 17:25 | Comments(0)

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