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常世へ19―村松紅花名誉会員を悼む

    村松紅花名誉会員を悼む―虚子敬慕を貫かれた人

 村松紅花先生(本名友次。文学博士)には、昨年七月より病気療養中であったが、平成二十一年三月十六日、東京都清瀬市の病院にて永逝。享年八十八。
 長野県の丸子町に生まれ、戦時中に小諸に疎開した高浜虚子に師事して、戦後はその虚子庵の留守を守り、虚子没後は高野素十に従った。〈選者になると、句が下がる〉を持論としたが、素十亡きあとは、乞われてその一門を糾合する『雪』誌の選者となり、多くの俳人を世に送り出した。だが、〈師が在りし日のごとく、終生選を受け続けたい〉という信念はゆるがず、『雪』誌を出て俳誌『葛』主宰となって以後も、『ホトトギス』への投句を怠らなかった。その虚子敬慕の念は、有志を募り、私財を投じて実現に奔走した小諸高浜虚子記念館の建設に端的にあらわれている。
 また国文学者としては、井本農一氏を軸に結成された俳文芸研究会の主要メンバーで、とりわけ芭蕉の『おくのほそ道』研究において長く最善本と評価されてきた素龍清書本をしりぞけ、曽良旅日記とともに伝来した推敲本を最終決定稿と結論づけたこと(『曽良本「おくのほそ道」の研究』)、蕪村研究では尾形仂著『蕪村自筆句帳』以後の研究史に境涯の俳人像を加えたことが特筆される。
 『評伝高野素十』ほか、近代俳句論も多く、実作と研究の両面で師事した門下の一人として、その落胆は筆舌に尽くしがたい。(谷地海紅)
                 ―俳人協会『俳句文学館』第458号(平21年6.5)より転載―
 
by bashomeeting | 2009-06-30 16:00 | Comments(0)

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