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海紅山房日誌

kaicoh.exblog.jp

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。

2008年 07月 27日 ( 2 )

A human being

 近松の『国性爺合戦』の第二で、和藤内(主人公〈ワトウナイ〉、のちの国性爺)が、韃靼(ダッタン)の手に落ちた明国を奪還すべく、平戸から出陣に向けて勇み立つ台詞のなかに、次のようなものがある。

  天の時は地の利にしかず。地の利は人の和にしかず。吉凶は人によつて日によらず。

 咀嚼を試みれば、〈戦争に勝つためには、自然条件(季節・天候・昼夜など)、地形情況(敵を防げる地勢か、味方を守れる土地か)、人心和合(味方同志が仲良く信頼し合っているか)という、大切な三つの条件がある。しかし、自然条件がどんなによくても地形が悪ければ勝てないし、たとえ地形の情況がよくても、人心がひとつにまとまらなければ、勝利することはできない。要するに、自然条件にも地形情況にも恵まれねばならないが、それが有効に働く前提として、人心の和合一致が不可欠なのである。そもそも、良い結果を得るか、悪い結果に陥るかは人間次第であり、けっして日の良し悪し(天気が良いか悪いか、要害かどうかなど)によるものではない〉ということになろうか。

 「天の時は」から「和にしかず」までは『孟子』公孫丑章句下の冒頭そのままで、「吉凶は人によつて日によらず」は、『徒然草』九十一段の結びの「吉日に悪をなすに必ず凶なり。悪日に善をおこなふに必ず吉なり、といへり。吉凶は人によりて日によらず」にそっくりである。『徒然草』のこの箇所も通釈しておけば、〈縁起のよい日でも、悪いことをすれば必ず悪い結果に終わり、縁起の悪い日でも、よいことをすれば必ずよい結果がでる、というのは昔からよく言われることである。つまり、吉凶とはその人の考えや方法によって決まるのであって、日の良し悪しに左右されない〉となろう。つまり兼好の場合は、吉凶の縁起をかつぐ無意味さを、この世の不確実性、つまり無常観を以て説いていて、人間の和合一致の意義を積極的に説く『国性爺合戦』と同日の論ではない。だが、通底することは A human being 、つまり人間が中心にいるということである。自他共に、人間をおろそかにしてはならないということである。なお、これらの典拠には中国の元の時代の『事文類聚』(前集)なる稀覯本(和刻本もある由)で、沈顔の言説を参看する必要があるようだが未見。
by bashomeeting | 2008-07-27 18:35 | Comments(0)

ニンゲンのゆくえ

ヤンマ おい、おい。
ニンゲ なんだよ。
ヤンマ わしだよ。
ニンゲ 生きていたのか。
ヤンマ 死んでりゃ、話しかけたりしないさ。
ニンゲ おれたちは、死んでからでも話しかけるよ。
ヤンマ 本当かい?
ニンゲ あの世があるからね。
ヤンマ 行ってきたのか?
ニンゲ 行っちゃ、戻ってこられない。
ヤンマ じゃ、なぜわかる?
ニンゲ わからないよ。
ヤンマ いい加減なやつだな。
ニンゲ みんながそういうんだから間違いない。
ヤンマ いい加減だってかい?
ニンゲ 違うよ、あの世があるってことさ。
ヤンマ 多数決を信じちゃいけない。
ニンゲ いや多数決ということでもない。
ヤンマ どういうことだ。
ニンゲ 実は数えたことはないんだ。
ヤンマ じゃあ、まだわしらと変わりはない。
ニンゲ ところで、なにか用事かい?
ヤンマ 今朝の命拾いの礼を言いに来たのさ。
ニンゲ 義理堅いね。
ヤンマ ついでながら…。
ニンゲ 礼は聞いたよ。
ヤンマ ブログを読んだよ。
ニンゲ だから、なんだ?
ヤンマ 間違っているよ。
ニンゲ どこが?
ヤンマ 食物連鎖のことさ。
ニンゲ どこが?
ヤンマ わしが死ねば、カマキリに食われる。カマキリが死ねば小鳥に食われる。小鳥が死ねば鷹がたかる。
ニンゲ そんな駄洒落じゃ、笑えない。
ヤンマ 「タカがタカル…」、なるほど、うまい。いやいや、わしの言いたいのは、その食物連鎖にニンゲン様は含まれないってことさ。ニンゲン様は牛を殺し、豚を殺し、魚を殺して食べ続ける。野菜や果物を含めて、食べるために、育てては殺している。遣らずぶったくりたあ、おまえさんらニンゲンのことよ。
ニンゲ 厳しいね。
ヤンマ その傲慢さがわかりゃ、せめてニンゲンがニンゲンを殺すのだけはやめることよ。それが、ニンゲンが自分の都合で命を奪い続けている生き物に対するつぐない。われわれの食物連鎖に加わりたきゃあ、それが出来てからにすることだナ。輪廻転生なんて虫のイイこたア、そのずっとあとで考えるがいいヤ。
by bashomeeting | 2008-07-27 11:04 | Comments(0)

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