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海紅山房日誌

kaicoh.exblog.jp

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。

2008年 08月 21日 ( 2 )

 『おくのほそ道』「室の八島」章段の執筆意図について、講義では繰り返し話しているつもりだが、小論文(essay type )試験をすると、〈「旅で初めて訪れた歌枕」にもかかわらず「本命とする陸奥のはるか手前の名所だった」ことや「この歌枕が期待を裏切るものであった」ために曽良の縁起譚のみに終始している〉という論調がほとんどである。尾形仂著『おくのほそ道評釈』(角川書店)に従っている人々である。
 だから、あえて繰り返しておこう。芭蕉の陸奥行脚の目的のひとつは歌枕探訪である。陸奥行脚は白河の関からはじまるが、そこに至る前の、なるべく早い時期に「歌枕とはなにか」を解説する必要がある。その適切な箇所として室の八島が選ばれている。その本意を縁起という方法で解説しているのである。このことは「又煙を読習はし侍るもこの謂也」という知識を踏まえて、「糸遊に結つきたる煙哉 翁」(『曽良旅日記』)とあることでもわかると思うのだが…。
by bashomeeting | 2008-08-21 11:13 | Comments(6)
 文芸に限らず、一般に芸術活動の産物である作品は、〈AはBである〉という命題によって要約できる主題を持っている。それは作品の分量にかかわらずひとつあるはずだ。しかし『おくのほそ道』の主題は以下のような七種の見解が併立したままである。

1,「不易流行」という世界観の提示。
2,「不易流行」という世界観、及びその根本理念に基づく蕉風(詩精神)の提示。
3,「造化随順」思想に基づく自然と人生への賛歌。
4,風雅に徹して生きようとする人間の理想像の提示。
5,『伊勢物語』の延長線上に、元禄の「東下り」を描いたもの。
6,奥羽の自然描写を主眼に、人事面では「恋」を描いたもの。
7,中心主題はなく、小主題(意味の焦点)を並立的に展開したもの。
               ―堀切実編『「おくのほそ道」解釈事典』東京堂出版による―
 
 これらを整序することは大して難しいことではない。君の卒業論文に期待していることは、根幹では矛盾することのない、これら七点を秩序立てて整理することである。
by bashomeeting | 2008-08-21 10:15 | Comments(0)

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