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海紅山房日誌

kaicoh.exblog.jp

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。

2013年 03月 07日 ( 2 )

 磐井さんのブログを覗いて関心をもつ人のために、春帖・歳旦帖・春興帖に関する導入教材を転載する。講義では、これらの資料を援用して、次のようなことを説いている。

1,江戸時代は撰集(anthology)の時代で、個人句集(individual works)の時代ではないこと。
2,蕪村春帖の魅力は、彼がいわゆる俳諧宗匠(業俳・職業俳人)ではないところから生まれたこと。
3,蕪村春帖の代表的なものは『夜半楽』で、そこに収める「春風馬堤曲」「澱河歌」「老鶯児」の三部曲は、停滞してゆく連句文芸の傍流で、蕪村の芝居好きが昂じた物語性や「仮名書きの詩人」的な教養、また御座敷歌謡などの享楽趣味も手伝って生まれたこと。ただしその享楽は禁欲との二重写しであり、その奥にたゆたう蕪村の孤影を見とどけるべきこと。

 教室で解説とともに参照するものゆえ不親切な点もあろうが、参考まで。

《春帖・歳旦帖・春興帖》の比較

《春帖》
①分類:年頭・春季を趣向とする俳諧撰集(歳旦帖・春興帖を含む)。
②刊行時期:新春
③編集時期:前年中に準備開始することがある。
④刊行者:俳諧宗匠(業俳・職業俳人)
⑤入集者:宗匠とその一門、知友
⑥内容:歳旦三つ物、歳旦引付(付載の三つ物や歳旦・歳暮句)
⑦特色:配り物→販売。装幀や構成に毎年同じ傾向あり。
⑧参考文献:田中道雄『蕉風復興運動と蕪村』(平12)

《歳旦帖》
1.分類:歳旦開当日の句帖。春帖の一つ。
2.刊行時期:年始
3.編集時期:前年中に準備開始することが多い。
4.刊行者:俳諧宗匠(業俳・職業俳人)
5.入集者:宗匠とその一門、知友
6.内容:歳旦三つ物、歳旦引付(付載の三つ物や歳旦・歳暮句)
7.特色:配り物→販売。装幀や構成に毎年同じ傾向あり。
8.其他:宗匠手書き懐紙を印刷(歳旦集、三つ物揃)したことに始まる。井筒屋が合冊して事業とし、年頭の縁起物として販売。享保以後は宗匠単独に刊行。
9.参考文献:雲英末雄『俳書の話』(平4)

《春興帖》
1)分類:春帖の一つ。
2)刊行時期:新春
3)編集時期:主に新春を迎えてから。
4)刊行者:俳諧宗匠(業俳・職業俳人)
5)入集者:宗匠とその一門、知友
6)内容:歳旦・歳暮吟、春興吟(蕪村『夜半楽』のような例外もある)
7)特色:少部数、配り本、多くは挿絵入り。装幀や構成に毎年同じ傾向あるが、歳旦帖に比べて趣向性が強まる。
8)其他:近世中期以降の夏興、秋興の小冊や一枚摺の流行を導く。

〔注〕
歳旦●●●元日を言祝ぐ句。試筆・試毫ともいう。
歳旦開●●●連歌俳諧の宗匠が設ける興行(event)の一つ。歳旦(句)の披露と歳旦三つ物が中心。
by bashomeeting | 2013-03-07 18:57 | Comments(0)
 筑紫磐井さんから久しぶりに便りあり。用件は、サイト「BLOG俳句空間」の中に「春興帖論」という宣言を付して、歳旦帖・春興帖というコンテンツを開いたので、温かく見守るようにというもの。研究というより、〈蕪村に倣って新生俳句の場を作ろうという趣旨〉であるという。

 早速覗いてみた。日付に「2013年3月1日金曜日」とあって、「平成二十五年 春興帖 第一」とタイトルされ、筑紫磐井・藤田踏青・福永法弘・早瀬恵子・網野月を・田中悠貴・前北かおる・山崎祐子・小川春休・杉山久子・後藤貴子・北川美美・月野ぽぽな・しなだしん・林雅樹・仲寒蝉という十六名の春興句が掲げられている。

 磐井さんの「春興帖論」は、蕪村七部集が門人の編集に成るのに対し、蕪村の春興帖が蕪村自身の企画・編で、きわめて趣向豊かな書物であることに注目する。そして「春興こそ蕪村のエネルギーであり、近代俳句の源流であったことに思いをいたし、平成の新風は春興帖に起こるべしと宣言して、この平成25年春興帖を始める次第である」という。〈あまり論じられることがないが、春興帖という環境がなければ「春風馬堤曲」は生まれなかったのかもしれない〉というあたりに、文化の仕掛け人(avant-garde)の磐井さんらしい思い入れが見えて、好ましく読み了えた。
by bashomeeting | 2013-03-07 18:48 | Comments(0)

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