2012年 12月 30日
初めての連句◆俳諧ゼミ(3,4年)
待ち合はせ明るいセーター目印に 茜
急いで向かふモミの木の下 大貴
アラームに叩き起こされサンタさん 大貴
白い煙のあがる煙突 ひとみ
パンケーキみたいでおいしさうな月 宏美
紅葉見ながら歩く公園 早央里
付句作者(出勝ち)
梅田茜・田中大貴・上原ひとみ・相馬宏美・松本早央里
捌き 相馬宏美
兎チーム「セータの」表六句
セーターのほつれ毛糸や祖母思ふ 梓帆里
おさなご背負ひ踏む枯葎 直己
北国で寒くはないかと便り来て 恵
二重窓から見える青空 沙織
薄白の飛行機雲や昼の月 麻衣
落葉が匂ふ木の下を掃く 拓己
付句作者(出勝ち)
川邉梓帆里・吉岡直己・池田恵・工藤沙織・菅原麻衣・山崎拓己
捌き 工藤沙織
寅チーム「母親の」表六句
母親のセーター編む手や親心 悠
雪の寒さを遮る愛情 啓佑
大晦日共に鐘打つ夫婦にて 朝仁
笑ひ声して長い行列 美緒
まんまるな月を囲んで星いつぱい 渉
窓の隙間を秋風の音 翔太
付句作者(出勝ち)
中島悠・河内啓佑・太田朝仁・河村美緒・荒井渉・清水翔太
捌き 荒井渉
2012年 12月 25日
初めての連句◆大学院俳諧ゼミ年納め
「笑ひ声」一巡
笑ひ声一輪挿しの実南天 海紅
研究室にコートとりどり 文子
雪乃道提出期限せまり来て 雪乃
ピンポンマムのみどり鮮やか 万季
三丁目フラワーショップに昼の月 はな
二十歳を祝ふ鈴虫の声 諒
炉開きや京舞といふ帯結び 芳恵
映画のやうなキスをしてをり 玲子
雑踏に君の手引きしあの頃よ 潤一
スキップで行く春の街角 執筆
連衆:根本文子・大越雪乃・上野万季・金子はな・
斉藤 諒・松岡芳恵・明石玲子・尾沼潤一
谷地海紅
2012年 12月 24日
講読の時代を懐かしむ
ところで、大学はいま似非セメスターの時世で、何でも半年の突貫作業で済ませられるという信仰が広まりつつある。カリキュラム次第でそれが可能であるという主張なのだろう。だが、経験的に言えば、学問は人のなせるワザであって、カリキュラムがもたらすものではない。ボクの生家は小さな町工場であったが、中学を出て年季奉公にやってきた少年が一人前の職人になるには、ボクの父と寝食を共にする五年の歳月が必要であった。マニュアルで人をしばっても、前途有為の後継は育たないのである。三年、四年かけてでも、古典を読みたいという時代が懐かしい。将来的に、講読という言葉と時間を取り戻そうとする時がやってくるはずだが、ボクらの時代にはむずかしいだろう。
恋仲の小さきクリスマスケーキ 西谷たつを
2012年 12月 23日
第七回 芭蕉会議の集い(於高浜「いづみ荘」)◆湖の月の明るき村に住む 素十
師走も年用意を急がねばならない時期に入りました。先日はメールをありがとうございました。医師の薦めで検査を済まされた由、よい決断をされたことに敬意をおぼえます。除夜の鐘を聞く前に、恙の不安を払いのけておくのは追儺のむかしからのならいです。芭蕉会議の集い(忘年句会)を御一緒できなかったことは残念ですが、霞ヶ浦も筑波嶺も逃げ出すことはありませんから、いずれ季節をかえて御一緒したいものです。
さて三十数年ぶりの高浜、ボクは幹事としての事前確認と懐旧にひたる目的で、十五日(土)の朝食後には自宅を出て、まず常磐線の景色を懐かしみました。高浜は冬のものとは思えない温かい雨に包まれていました。昔と変わらない駅や駅前にむしろ驚きながら、恋瀬川沿いを、傘をさして遠い記憶をたどりながら歩き始めます。いづみ荘が見えるあたりでケイタイが鳴って、遠来のS氏が予定よりも早く、すでに宿で待っているとのこと。二階の句会場に荷物を置いて雑談に花を咲かせていると、女将が床の間に素十句碑のもとになった色紙「湖の月の明るき村に住む」(野花集・S27)を掲げてくれます。そして素十門の人々の名をつぎつぎと口にするものですから、ボクは懐かしさに胸がつまってしまいます。傘をさして、S氏とふたりでその句碑のある寺を訪ねました。そこは廃寺となって久しい寺で、高淵寺観音堂と言います。
戻ると宿のマイクロバスを利用したメンバーをはじめ、大方の参加者が揃っていましたので、再びそして正式に句碑への案内。雨に濡れる山茶花の下に傘をひろげ、高浜駅長だった戸井田厚・和子夫妻がこの句碑守をしていたことを紹介し、紅葉散り敷く墓地をめぐって宿に戻りました。足弱のMさんが、思案の末に石段を登ることを断念。傘をさして観音堂の下で待つという姿も旅情を深くするもののひとつでした。宿に戻って、「素十の秀句 (冬)」という話をしました。
初日の雨は天気予報通り、夜半までにはあがりました。翌十六日(日)の朝は、早起きした仲間が霞ヶ浦の名前そのままに、冬霧に蔽いつくされた湖畔を歩いて、年を惜しんだようです。カモやカイツブリが見え隠れしていましたが、地元の人の話ではすでに白鳥も来ているとのこと。おそらくウソ・シメ・ゲラ・ジョウビタキなども人目を忍んでいたにちがいありません。まことに幻想的な世界の出現といえるものでした。その景色も朝食後には一転して冬晴れとなり、句会を終えて宿をあとにして、恋瀬川べりを歩いて、古式ゆかしい高浜神社なども拝んで帰途につきました。いづみ荘の鯉の甘露煮も評判で、みんな喜んでくれたようです。年が明けましたら、Kさんを含めた有志で再訪を計画したいものです。
句碑守は駅長さんよ山茶花よ 市川千年
恋瀬川果てなんところ時雨宿 伊藤無迅
山茶花にたつぷりの雨素十句碑 小出富子
無患子を拾ひ一人の恋瀬川 根本文子
実南天崖の下にも墓のあり 米田主美
冬の靄押し黙りたる湖畔かな 三木つゆ草
冬日濃き霞ヶ浦の目覚めかな 情野由希
これは句会の成果の一部です。みんなうまくなったものです。
最後に愚句を少々お目にかけます。御批判下さい。
いづみ荘 七句
○雀らの仲良きことよ枯木宿
鴨の子に見ゆるは鳰よ恋瀬川
○同宿に冬の蝿ゐることも旅
冬霧のはれゆく迷ひ解く如く
冬霧のはれゆく謎を解く如く(改案)
鴨の声沼に迷ひを解きに来し
○枯芦や月の明るき村はここ
色紙見てその句碑を見て年惜しむ
〔付記〕K氏からすぐに返信があり、〈会員諸兄の俳句いいですね。驚きました。特に富子さんの「山茶花にたつぷりの雨素十句碑」にひかれました。「素十句碑」と言って、吟行であることをはっきりさせながら、一般性のある句になっている点が立派だなと感嘆〉とあった。なお拙句のうち、○印はK氏の合点を得たものである。
2012年 12月 03日
削ること(その2)◆俳諧ゼミの教材として
都鳥とんで二人に話なし 酒井小蔦
2012年 12月 03日