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海紅山房日誌

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芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。

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七月二十四日(水)、二番子である一羽のツバメの雛が巣立った。
一羽であるわけは、他の五羽がつぎつぎ死んでしまったからだ。
親は一番子のときと同じく、トンボや羽アリなど、
かいがいしくエサを運んでいたが、
水を運ぶことはできなかった。

巣の中に干上がった、わが子を見とどけて、
不思議そうに首をかしげる、親ツバメの仕種が脳裏を離れない。
一羽、また一羽と干物のように軽くなった亡骸は、
親がつまんで巣の外に捨てるのだろう、
ボクは何日かおきに、床に落ちているそれを片付けた。

草庵の空を、
今朝、九羽のツバメがやかましく舞っている。
あの中に、
亡くなったものたちの分も生きてゆく、
一羽のたくましい子ツバメが雑じっているにちがいない。
暑い七月であった。
by bashomeeting | 2013-07-26 10:05 | Comments(0)
 墓参り  椎名美知子

湿った土の上で
丸めた新聞紙の端を
赤い炎が縁取って
かざした線香が香り立つ

山あいのお墓の細い道
暖冬の今年
もはや若草が萌えている

街の喧騒から遠く
父母は何を語らっているのだろう
父の十三回忌
母はもう二十年になる
私たち三人の子と家族
数名の親類

足もとの新聞紙が
白く縮れながらまだ燃えている
弟がひしゃくの水で
幼い時と同じ手つきで火を消した
〈焚火の火 消えてるかな〉
夜 ふとんに入ってからも
起きだして確かめにいっていた
兄の背にも叔母の背にも
時がよみがえって
焚火の匂いが通り過ぎた

線香の紫煙が
ゆるやかに
杉木立に消えて行く

▶▶▶詩誌『沙漠』№270(平成25年3月)所載。 発行者 河野正彦(〒802-0826北九州市小倉南区横代南町3丁目6-12)
by bashomeeting | 2013-07-22 11:20 | Comments(0)
 無駄なもの  風間美樹

テレビでマラソンを観ていた 九十五歳の母は言う
無駄なことをする ただ走るだけだ

苦労して 山登りする人を観て
なんて無駄なことをしているのだろう
疲れるだけなのに

母にとって 役に立たないことをする人は
みんな無駄に見えるらしい

母よ この世は無駄なことに満ちている
そして大切なこと

機械も遊びがないと 動かない
無駄なことは 人生を豊かにする
間のようなもの

無駄なことに 一生を賭けて
生きた人はなんて幸せな人なのだろう
例えば映画の「フーテンの寅さん」のように

〔解題〕詩誌『沙漠』№271(平成25年6月)所載。 発行者 河野正彦(〒802-0826北九州市小倉南区横代南町3丁目6-12) 
by bashomeeting | 2013-07-22 10:52 | Comments(0)
  葉生姜     椎名美知子

朝靄が地をはって
尖った葉が
シンクロナイズスイミングの
おびただしい手のように伸びていた

そのひとつをつかんで持ち上げたら
みーんなついてきて
一列に並んだ小人たちの連隊
水滴をぶるるんと振り撒いて踊りでた

夜露に濡れながら
赤い帽子をかぶった小人たちが
話しあったのかもしれない
明日の朝 みんなをおどろかしてやろうねって

なんだが父はとても楽しそうだった
小さな畑の取り立ての葉生姜
朝の光と水で洗って食卓に乗せた

葉生姜の鮮烈な香りが誘う
楽しいことが始まりそうなうずき
また出会いたい
私の好きな夏の朝の感覚




〔解題〕詩誌『沙漠』№271(平成25年6月)所載。 発行者 河野正彦(〒802-0826北九州市小倉南区横代南町3丁目6-12) 
by bashomeeting | 2013-07-22 10:43 | Comments(0)
 時空といえば、この世はすべて説明できてしまうのだが、人生を創出するのは空間であって、時間ではない。時間という考え方に立脚するにしても、その時間は面によって生まれるものであり、線によって形容することはむずかしい。芭蕉晩年の思考はそんな地点にたどり着いていたように思う。
by bashomeeting | 2013-07-08 07:53 | Comments(1)
 「幻住庵記」を抄出して芭蕉の生涯を紹介し、『おくのほそ道』の旅を境にもっとも大きな変化があったことを説いた。それは名作の名を擅にしている『おくのほそ道』を批判的に読みつつ、最晩年の作品と比較することで明らかなこと。最後にたどり着いた作風は、本歌本説と距離を置いて、己が生涯を浮かべる現実を承認する覚悟から生まれている。それは近現代俳句の世界とどこか似た表情をしているようだ。作風の変化は人生の変化であり、変化する理由はそれだけ芭蕉が自分の命に誠実であったことの証左であることを伝えたかった。
by bashomeeting | 2013-07-08 06:58 | Comments(0)
 七月一日(月)、職場の指示でやまびこ209号で出掛け、やまびこ216号で戻るという、日帰りのせわしい旅をした。帰途の216号は偶然ながら、先週黒羽から戻る際と同じ電車だった。
 
 目的地は福島県東白川郡棚倉町。新白河駅の東南、白河の関や旗宿とほぼ同じ緯度に位置する城下町で、戊辰戦争にまつわる史実のある町でもある。

 ボクの仕事は棚倉町立図書館開館記念講演会で「芭蕉が教えてくれたこと」という話をすること。城址にあった図書館が水郡線の駅前に場所を移して新築。午前中にはそのオープンセレモニーがおこなわれ、午後にボクの講演が設定されていた。

 東日本大震災のお見舞いを申し上げ、どのような情況にあっても、新しいことが始まるのは素敵なことだという前置きをした。新築木造建築の香りは林業で栄えた歴史を持つ町らしく、家具建具の町工場の息子として育ったボクには父の匂いそのものでもある。『おくのほそ道』の白河の関と須賀川の箇所をテキストにして、芭蕉の「ゆきかふ」という言葉は人生観そのものであるという話をした。聴講してくれた人は目算で百名ほどか、町長、教育長、そして生涯学習課の人々が顔を揃えて終始なごやかな時間であった。

 新幹線の新白河駅と棚倉町を結ぶ送り迎えは学芸員のFnさんが運転する車の世話になった。彼は香道の師範格で和歌にも通じている。それで連歌俳諧という講演内容と香道の世界の近似について興味を示し、〈秘伝に触れない範囲で〉いろいろと教えてもらった。新幹線駅と図書館との間は片道四十分ほどだから、ボクとしてはたっぷり講義を受けたかたちで、心から感謝している。
by bashomeeting | 2013-07-02 09:03 | Comments(0)
一 同二日 天氣快晴。辰ノ中尅、宿ヲ出。ウラ見ノ瀧(一リ程西北)、カンマンガ淵見巡、漸ク及午。鉢石ヲ立、奈須・太田原ヘ趣、常ニハ今市へ戻リテ大渡リト云所ヘカヽルト云ドモ、五左衛門、案内ヲ教ヘ、日光ヨリ廿丁程下リ、左へノ方ヘ切レ、川ヲ越、せノ尾・川室ト云村ヘカヽリ、大渡リト云馬次ニ至ル。三リニ少シ遠シ。
〇今市ヨリ大渡ヘ貳リ余。
〇大渡ヨリ船入ヘ壱リ半ト云ドモ壱里程有。絹川ヲカリ橋有。大形ハ船渡し。
〇船入ヨリ玉入ヘ貳リ。未ノ上尅ヨリ雷雨甚強。漸ク玉入ヘ着。
一 同晩 玉入泊。宿悪故、無理ニ名主ノ家入テ宿カル。
一 同三日 快晴。辰上尅玉入ヲ立。鷹内ヘ二リ八丁。鷹内ヨリヤイタヘ壱リニ近シ。ヤイタヨリ澤村ヘ壱リ。澤村ヨリ太田原ヘ二リ八丁。太田原ヨリ黒羽根ヘ三リト云ドモ二リ余也。翠桃宅、ヨゼト云所也トテ、貳十丁程アトヘモドル也。
一 四日 浄法寺図書ヘ被招。
一 五日 雲岩寺見物。朝曇。両日共ニ天氣吉。
一 六日ヨリ九日迄、雨不止。九日、光明寺ヘ被招。昼ヨリ夜五ツ過迄ニシテ帰ル。
一 十日 雨止。日久シテ照。
一 十一日 小雨降ル。余瀬翠桃ヘ帰ル。晩方強雨ス。
一 十二日 雨止。図書被見廻、篠原被誘引。
一 十三日 天氣吉。津久井氏被見廻テ、八幡へ参詣被誘引。
一 十四日 雨降リ、図書被見廻終日。重之内持参。
一 十五日 雨止。昼過翁と鹿助右同道ニテ図書ヘ被参。是ハ昨日約束之故也。予ハ少々持病氣故不参。
一 十六日 天氣能。〇翁、舘ヨリ余瀬ヘ被立越。則同道ニテ余瀬ヲ立。及昼、図書彈蔵ヨリ馬人ニ而被送ル。馬ハ野間ト云所ヨリ戻ス。此間二里半余。高久ニ至ル。雨降リ出ニ
  依、滞ル。此間壱里半余。宿角左衛門、図書ヨリ状被添。
一 十七日 角左衛門方ニ猶宿。雨降。野間ハ太田原ヨリ三里之内、鍋かけヨリ五六丁西。
一 十八日 卯尅、地震ス。辰ノ上尅雨止。午ノ尅、高久角左衛門宿ヲ立。暫有テ快晴ス。馬壱疋、松子村迄送ル。此間壱リ。松子ヨリ湯本ヘ三リ。未ノ下尅、湯本五左衛門方ヘ着。
一 一九日 快晴。予鉢ニ出ル。朝飯後、図書家來角左衛門ヲ黒羽ヘ戻ス。午ノ上尅、温泉ヘ参詣。神主越中出合、寶物ヲ拝。與一扇ノ的躬残ノカブラ壱本・征矢十本・蟇目ノカブラ壱本・檜扇子壱本、金ノ繪也、正一位ノ宣旨・縁起等拝ム。夫ヨリ殺生石ヲ見ル。宿五左衛門案内。以上湯敷六ヶ所。上ハ出ル事不定、次ハ冷、ソノ次ハ温冷兼、御橋ノ下也。ソノ次ハ不出。ソノ次温湯アツシ。ソノ次、湯也ノ由、所ノ云也。
温泉大明神ノ相殿ニ八幡宮ヲ移シ奉テ、雨神一所方ニ拝レサセ玉フヲ、
  湯をむすぶ誓も同じ石清水     翁
     殺生石
  石の香や夏草赤く露あつし
正一位ノ神位被加ノ事、貞享四年黒羽ノ舘主信濃守増榮被寄進之由。
by bashomeeting | 2013-07-01 06:53 | Comments(0)
日光→筋違橋(日光街道、志渡淵川)たもと左折→大谷川(日光市)越え→右折→瀬尾(日光市)→川室(日光市)→大渡(日光)→船入→玉入泊(名主ノ家)→矢板→大田原→那須野→黒羽余瀬の翠桃(鹿子畑家善太夫豊明)宅→翠桃の兄高勝家(浄法寺家継承。城代家老・桃雪→芭蕉公園)家→雲巌寺→高勝家→光明寺→高勝家→余瀬翠桃宅→篠原→八幡(金丸八幡=那須神社)→高勝家→余瀬(翠桃宅)→野間(黒磯市)→高久(角左衛門家泊)→松子→湯本(五左衛門家泊)→温泉神社→殺生石
by bashomeeting | 2013-07-01 06:51 | Comments(0)
 「松尾芭蕉翁が黒羽に残した10句を焼印」(ホテル花月)した煎餅。品名に「おくのほそ道/芭蕉旅日記/くろばね句碑めぐり」とあり、煎餅の箱には栞が入っていて、次の十一句が日を追って説明されている。その記事をなるべく忠実に写してみよう。ちなみに、煎餅は「汗の香に衣ふるはん行者堂」を除く十枚。

◆五月二十一日(新暦)
矢板から日光北街道を黒羽に到着する途中、小姫「かさね」と出会う。宿泊=翠桃(鹿子畑豊明)邸
  かさねとは八重撫子の名なるべし 曽良【句碑:西教寺】

◆五月二十二日(新暦)
翠桃邸でゆっくり、今日は桃雪さんのお招きを受ける。宿泊=桃雪(浄法寺高勝)邸
  山も庭も動き入るるや夏座敷 芭蕉【句碑:浄法寺桃雪邸跡】
○谷地注、正しくは「秋鴉主人の佳景に対す/山も庭にうごきいるゝや夏ざしき」(『曽良旅日記』俳諧書留)。

◆五月二十三日(新暦)
今日は江戸で修行した禅の師である仏頂和尚ゆかりの雲巌寺を訪ねる。宿泊=桃雪邸
  木啄も庵はやぶらず夏木立 芭蕉【句碑:東山雲巌寺】

◆五月二十四日(新暦)
朝から雨天、数日続きそうなのでゆっくり過ごす。宿泊=桃雪邸
  行春や鳥啼き魚の目は泪 芭蕉【句碑:芭蕉の道入口】

◆五月二十五日(新暦)
今日も雨、終日静かに過ごす。宿泊=桃雪邸
  田や麦や中にも夏のほとゝぎす 芭蕉【句碑:芭蕉の道の途中】

◆五月二十六日(新暦)
又、終日雨、ゆっくり一日世話になる。宿泊=桃雪邸
  鶴鳴くや其声に芭蕉やれぬべし 芭蕉【句碑:芭蕉の広場】

◆五月二十七日(新暦)
雨。修験光明寺に出掛ける。宿泊=桃雪邸
  夏山に足駄を拝む首途哉 芭蕉【句碑:修験光明寺跡】
  汗の香に衣ふるはん行者堂

◆五月二十八日(新暦)
久々に晴れ。近くを散歩する。宿泊=桃雪邸

◆五月二十九日(新暦)
又、朝から雨、終日静かに過ごす。宿泊=翠桃邸

◆五月三十日(新暦)
雨やむ、桃雪に誘われ、犬追馬場・玉藻稲荷神社の周辺を歩く。宿泊=翠桃邸
  秣負ふ人を枝折の夏野哉 芭蕉【句碑:玉藻稲荷神社】

◆五月三十一日(新暦)
晴天、金丸八幡宮に参拝する。宿泊=翠桃邸

◆六月一日(新暦)
雨降り、桃雪の見舞いを受ける。歌仙が巻き収められる。宿泊=翠桃邸

◆六月二日(新暦)
雨が止む。桃雪邸を訪問し、黒羽での長逗留で御世話になったお礼を伝える。宿泊=桃雪邸
  今日も又朝日を拝む石の上 歌仙・芭蕉【句碑:明王寺】

◆六月三日(新暦)
晴のち雨。いよいよ旅立ち、那須殺生石方面に行く。宿泊=那須・高久覚左衛門
  野を横に馬牽きむけよほとゝぎす 芭蕉【句碑:光明山常念寺】

芭蕉の旅は那須湯本より芦野、白坂、白河の関へと…
by bashomeeting | 2013-07-01 06:42 | Comments(0)

芭蕉会議、谷地海紅のブログです。但し思索のみちすじを求めるために書き綴られるものであり、必ずしも事実の記録や公表を目的としたものではありません。


by bashomeeting